大学発ベンチャーの「起源」(32) メロディ・インターナショナル

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メロディ・インターナショナル(高松市)は香川大学発のIoT(モノのインターネット)を利用した医療支援ベンチャー。2015年7月、同社顧問で胎児の状況を監視する「ドップラー分娩監視装置」を開発した原量宏香川大瀬戸内圏研究センター特任教授の研究成果をベースに起業した。

産院不足とコロナ感染に有効な分娩監視装置

ドップラー分娩監視とは超音波で胎児の心拍を測定し、妊婦健診や分娩監視で利用されている。だが、既存の監視装置は据置型で場所を取るため、測定できる場所が病院などに限られた。

同社はこの装置を小型化した上で、スマートフォンなどのモバイル通信機器と組み合わせ、いつでもどこでも遠隔で胎児の状態をモニタリングできる「分娩監視装置iCTG」を開発し、2019年に医療機器として発売した。

スマホやタブレット経由で胎児と妊婦の状況を遠隔監視する(同社ニュースリリースより)

国内では産科医院が減少し、産院過疎地では健診のために遠くまで通院しなければならないケースもあり、妊婦の負担となっている。半面、高齢出産が増えて出産のリスクも高まっており、胎児や妊婦のきめ細かいケアが求められている。

さらには新型コロナウイルス感染症の流行拡大で、通院時の感染も心配だ。こうした課題を解決するには周産期における遠隔医療体制が必要で、その手段となる同社の技術が注目されている。

確かな技術と将来性で高い評価

2016年11月に総務省の「ICTイノベーション創出チャレンジプログラム(I-Challenge ! )」に採択されると、2017年2月には第三者割当増資により約1800万円の調達に成功。同月には四国経済産業局から「異分野連携新事業分野開拓計画『新連携』」の認定を受けた。

創業から3年後の2018年6月に「香川大学発ベンチャー」として認定され、2019年12月には「ものづくり日本大賞 2019」で経済産業大臣賞を受賞している。

2021年4月、京都大学イノベーションキャピタル株式会社(京都市)を無限責任組合員とするイノベーション京都2021投資事業有限責任組合(KYOTO-iCAP2号ファンド)を引受先とする1億5000万円の第三者割当増資に成功した。

今回の第三者割当増資は、KYOTO-iCAP2号ファンドファンドが京大以外の大学発ベンチャー企業へ投資した初めての投資案件だ。京大が認めた大学発ベンチャーとして、さらに信頼感を増すだろう。

京都大学イノベーションキャピタルも高く評価し、第三者割当増資を引き受けた(同社ニュースリリースより)

海外市場も期待できる。合計特殊出生率が高い新興国や発展途上国では、専門医不足と妊婦の長距離搬送による高い母子死亡率が問題になっている。こうした国々でメロディ・インターナショナルの遠隔医療支援技術は、社会課題の解決策であると同時に巨大なビジネスチャンスの「芽」ともなりそうだ。

文:M&A Online編集部