コロワイド買収後の大戸屋、集客苦戦で早くも目標未達となるか

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大戸屋ごはん処 元住吉駅前店

コロワイド<7616>が敵対的TOBを仕掛けて傘下に収めた大戸屋ホールディングス<2705>が、2021年5月に公表した新中期経営計画の目標を早くも下回りそうです。新中期経営計画では、2022年3月期の売上高を229億9,000万円としていました。しかし、2022年3月期第3四半期の売上高は137億7,200万円。90億円以上の開きがあります。

集客が十分に回復しておらず、大幅な原価の低減、余剰コストの削減も図れていません。新生大戸屋は買収時に株主に説明した高収益化を実現できるのでしょうか?

この記事では以下の情報が得られます。

・買収前と買収後の業績
・大戸屋とやよい軒の月次売上推移

やよい軒に真っ向勝負を仕掛けたか

※大戸屋「新中期経営計画」より

コロナ禍での買収となった大戸屋。2021年3月期の売上高は前期比34.3%減の161億3,900万円、33億4,300万円の営業損失(前年同期は6億4,800万円の営業損失)となりました。新中期経営計画は、そこから反転して増収、EBITDAベースでの増益を実現するというもの。特に2022年3月期は著しく回復する見込みでした。売上高は前期比42.4%増を見込んでいます。

見通しはやや甘かったかもしれません。2021年4-12月の売上高が137億7,200万円。2022年1-2月の全店の売上高は39億5,400万円です。合計すると177億2,600万円。2022年3月期の通年平均月商は19億5,800万円でした。仮に3月の売上高が20億円だったとすると、2022年3月期通期の売上高は200億円にも届きません。

大戸屋の2022年1月の既存店売上高は前年比26.8%増、2月は13.7%増と大幅に増加しているように見えます。しかし、客数が比較的安定していた2019年と比べると見え方は変わってきます。

下のグラフは大戸屋とやよい軒の既存店月次売上高を2019年、2020年比に修正したものです。大戸屋は2021年6月に100%を超えましたが、それ以降は7~80%台に留まっています。

新生大戸屋は集客力を高めるため、新たに30~40代の男性客をターゲットに定めました。野菜を豊富に使って女性客の取り込みに成功していた大戸屋が、顧客の軸をずらしたのです。2021年8月18日から31日までの期間限定でご飯おかわり無料キャンペーンを打ち出しました。正に男性客を狙ったものです。

ご飯おかわり無料を当初から打ち出していたやよい軒は、男性客の取り込みに成功していました。今後は熾烈な顧客の取り合いが起こるものと予想できます。

大戸屋は男性客向けにハンバーグや牛肉野菜炒め(プルコギ)など、肉中心のメニューを強化しています。

※大戸屋「新中期経営計画」より

ただし、ブランドの再定義やキャンペーン、メニュー改定による改革は、今のところ目覚ましい集客効果に結びついていません。

コロナ禍では固定費の削減が求められる

コロワイド買収の争点となったのが、店内調理を改めて効率化を図るかどうかでした。全面的なセントラルキッチン化は見送られたものの、一次加工は工場で行われるようになりました。効率化を進めたことで、2022年3月期第3四半期の原価率は、買収前の2020年3月期第3四半期と比較して1.0ポイント減少しています。

■原価と販管費(単位:千円)

2019年3月期
第3四半期
2020年3月期
第3四半期
2021年3月期
第3四半期
売上高 19,383,918 12,030,734 13,772,164
原価 8,404,037 5,478,088 5,838,564
販管費 10,660,432 9,667,882 8,422,096
原価率 43.4% 45.5% 42.4%
販管費率 55.0% 80.4% 61.2%

決算短信より筆者作成

しかし、コロナを背景とした集客力の減退により、販管費率が6.2ポイント増加しています。コロワイド傘下の大戸屋は変動費の削減による収益力向上を狙っていましたが、商環境が大きく変化したことで固定費を大幅に削減する必要があるのです。すなわち、不採算店の退店やFC加盟店の獲得など、難易度の高い舵取りが求められます。

大戸屋は新業態「MM MARKET & CAFE」を2021年1月にオープンし、総菜専門店を百貨店を中心に期間限定で出店するなど、新たな需要取り込みにも動き出しました。その取り組みが成果に結びつく日がくるのか。注目が集まります。

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