もし最強の円高なら「MacBook Pro」は11万円も安かった!

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「むかしむかし 円が世界で一番強かった頃…」1996年に公開された映画「スワロウテイル」(岩井俊二監督)の台詞だ。この映画が制作中の1995年4月に1ドル=79円75銭と80円を突破、民主党政権時代の2011年には過去最高値となる75円32銭を記録した。あれから10年、日本円は同114円20銭前後で取引されている。当時は「日本経済を破壊する」と忌み嫌われた円高だが、現在では経済界も急速な円安に懸念を表明する事態に。理由は輸入価格の高騰だ。では、過去最高の円高であれば、人気輸入商品の価格はどれだけ値下がりするのか?

円高だとアップル製品が驚くべき低価格に!

日本時間の10月19日未明にアップルが発表した新型「MacBook Pro」は、自社開発した半導体「M1 Pro」と「M1 MAX」を搭載し、現行の「M1」搭載機に比べ処理速度が70%向上した高性能マシンだ。日本での価格は16インチモデルが29万9800円から。米国では2499ドルからで、これが過去最高の円高(1ドル=75円32銭、以下同)であれば18万8225円となり、現行の日本価格よりも11万円以上安く買えた計算だ。

ただし、実際の価格は為替相場通りにはならない。現行「MacBook Pro」の米国価格を、現在のドル円相場で換算すれば28万5386円。現行の日本価格は、それよりも約1万4000円以上高い。これは将来の円安に備えた「のりしろ」や、日本市場での販売管理費が上乗せされているためだ。とはいえ、アップルは円高時に日本価格を値下げしており、1ドル=80円を切る円高になれば、相当の値下がりになるはずだ。

先月発表された「iPhone13 Pro」(日本価格12万2800円)は999ドルからで、過去最高の円高であれば7万5245円と現行価格よりも5万円近く安い値段で買えたことになる。現在、アップルのネット販売では出荷まで1カ月待ちとなっている人気商品の第6世代「iPad mini」(同5万9800円から)は499ドルからで、過去最高の円高なら3万7585円となり2万円以上安い。

テスラ「Model 3」は日産「リーフ」よりも安く

米テスラの最廉価電気自動車(EV)の「Model 3」(同444万円)は4万1990ドルからで、過去最高の円高なら約316万円になる。日産自動車のEV「リーフ」の最廉価モデル(同337万400円)よりも安い上に、満充電での走行距離などの性能面でも上だ。日本のEVは円安に助けられていると言ってもいいだろう。

過去最高の円高だったら、テスラ「Model 3」は日本で「お手頃価格のEV」だったはず(同社ホームページより)

だが、なんと言っても最も買っておきたかった「商品」は米ドルだろう。過去最高の円高時に10万ドルを約735万円で購入(両替)していれば、現時点だと1142万円で売却(再両替)できる。約388万円の利益が生じる計算だ。複利計算だと年約4.2%の表面金利となる。

実際には為替手数料がかかるためここまでリターンは高くないし、通貨は投資商品なので預金と同列に比較はできない。そもそも、投資目的のドルを10年間も塩漬けにするケースはほとんどない。それでも、大手都銀の定期預金が年0.002%であることを考えると圧倒的に儲かることが分かる。

日本の経済成長率鈍化や人口減、財政赤字の急増で、再び急激な円高がやって来る可能性は低そうだ。ただ、何かの拍子で円高に振れることはあるだろう。その時は意中の輸入商品を「まとめ買い」しておきたい。

文:M&A Online編集部