旧経営陣の関係者が証拠隠滅を図ったか、オウケイウェイヴが孫会社を譲渡

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2022年8月25日の臨時株主総会で経営陣が一新したオウケイウェイヴに、前代未聞の出来事が起こっています。子会社のコーポレートベンチャーキャピタル「OK FUND L.P.」が取得したアップライツ(東京都港区)の株式52.6%を、臨時株主総会の合間を縫ってすべて譲渡していたことが明らかになったと、2022年8月30日「連結子会社の取締役会決議及び臨時株主総会決議に関する通知の受領並びに反対意見表明に関するお知らせ」にて開示しました。

株式の取得を決議したアップライツの臨時株主総会が行われたのは2022年8月28日。オウケイウェイヴ側の経営者は出席していません。

アップライツは、OK FUND L.P.が2021年12月に10億円で52.6%の株式を取得し、のれんの減損損失及び長期預け金の回収可能性が低下したことによる貸倒引当金を計上し、わずか8か月後に8億9,100万円の損失を出したいわくつきの案件。OK FUND L.P.の代表及び旧経営陣が、資金の流出を図ったのではないかとも言われています。

新体制となったオウケイウェイヴは、2022年9月1日「連結子会社の状況に関する説明会開催報告並びに社内調査委員会の設置及び同社による自己株式取得に対する無効主張に関するお知らせ」にて、「本自己株式取得は無効であり、依然としてアップライツは当社の子会社に該当するものと考えます」とし、アップライツの株式の取得は無効であると主張しています。

委任状争奪戦の争点にもなったアップライツのM&A

OK FUND L.P.の出資比率は99.95%がオウケイウェイヴ、0.05%がエムズ・コンサルティング(東京都港区)。エムズ・コンサルティングは経営支援を行う会社で、代表は佐久間将司氏。佐久間氏は仮想通貨スピンドルの監査役を務めた人物。OK FUND L.P.の代表であり、業務執行役を担っていました。

OK FUND L.P.は2021年12月にアップライツの株式52.6%を10億円で取得。アップライツは音楽制作、スタジオ運営などを行う会社。オウケイウェイヴはエンターテインメントコンテンツを発信し、Q&Aコミュニティサイトの場でクリエイターとファンが交流する場を提供するとしていました。

『「株式会社オウケイウェイヴ」「株式会社アップライツ」Q&Aコミュニティサイト、コンテンツの共同開発と展開を目的に資本業務提携を締結』より

オウケイウェイヴが新たな船出をするようにも見えますが、実はアップライツは佐久間氏が持ち込んだ案件で、十分なデューデリジェンスが行われていなかったことが関係者の証言によって明らかになっています。

また、アップライツは純資産が2,000万円、総資産でも1億5,000万円程度であり、営業利益は2,000万円ほど。成長性があるようには見えず、52.6%の株式を10億円で取得するのは不自然なほど高額でした。事実、半年後に4億3,700万円ののれんを全額減損損失として計上しています。

しかも、OK FUND L.P.の出資総額は20億円であり、ファンドの資金半分を拠出したのです。有望なベンチャー企業に小口の資金を提供する、ベンチャーキャピタルのあるべき姿からは程遠いやり方でした。

株主提案を行っていた(現在のオウケイウェイヴ代表である)杉浦元氏は、一連のM&Aを疑問視。2022年8月18日に「アップライツの事業計画及びバリュエーションに関する資料を求めるとともに、アップライツの個別の決算書ないし月次損益の開示を求めます。」といった質問状を送っています。

それに対し、旧経営陣は「個別の事業計画等は開示できませんし、今回、本株主が要求する個別の決算書ないし月次損益の開示はいたしかねます。」と回答。買収額の算出根拠はおろか、決算書の開示も拒否。疑惑は深まりました。

経営陣刷新の臨時株主総会はオウケイウェイヴが信頼回復を図る転機になりました。

新たな体制で真実が明らかになると多くの株主が期待をかける中、OK FUND L.P.がアップライツ株を譲渡する臨時株主総会の決議が行われていたのです。

主張が食い違う7億2,600万円の送金

オウケイウェイヴ代表の杉浦氏は、2022年8月31日にアップライツが株式を取得したことについての説明会を開催しました。

それによると、アップライツはオウケイウェイヴとのM&Aを終えた後、海外事業展開を行う目的で海外の取引先に7億2,600万円を送金。しかし、そのうち半分の3億6,300万円は2022年6月期に貸倒引当金として計上しました。つまり、海外の取引先に送金した債権は、回収可能性が極めて低いものだと言えます。

信じがたいことに、アップライツの臨時株主総会で決議したオウケイウェイヴが保有する株式の譲渡対価は、この7億2,600万円の債権。もし、アップライツの株式の買い戻しが成立するのであれば、オウケイウェイヴは10億円でアップライツの株式52.6%を取得したものの、わずか8か月ほどで4億3,700万円ののれんの減損損失を計上したうえ、7億2,600万円の回収見込みの低い債権(半分は貸倒引当金に計上)に化けたことになります。

説明会では、アップライツがオウケイウェイヴ又はOK FUND L.P.の指示により、海外の取引先に送金したと主張しているものの、そのような事実は確認されていないとしています。両社の意見は食い違いが生じています。

オウケイウェイヴは、9月1日に開示した「連結子会社の状況に関する説明会開催報告並びに社内調査委員会の設置及び同社による自己株式取得に対する無効主張に関するお知らせ」にて、「額面7億円を超える長期預け金債権の全額を対価としてアップライツが自己株式の取得を行うことは、会社法461条1項が禁止する分配可能額を超えた自己株式の有償取得に該当するものと考えます」とし、法的にも株式の取得が無効であると主張しています。

杉浦氏と、佐久間氏及びアップライツ代表の山田公平氏とは連絡が取れていないと言います。オウケイウェイヴはアップライツへの通知書において、「貴社(アップライツ)と当社との株式譲渡契約の締結が当社の承認なく行われていることにつき、悪意であった可能性が極めて高く」(「連結子会社の状況に関する説明会開催報告並びに社内調査委員会の設置及び同社による自己株式取得に対する無効主張に関するお知らせ」より)と、強く非難しています。

オウケイウェイヴの臨時株主総会ではアップライツのM&Aが争点の一つとなっていただけに、今回のアップライツの株式の取得は、旧経営陣側の関係者が証拠隠滅を意図して急いで切り離したととられかねない行為です。

2022年8月31日のZoomによる杉浦氏の説明会では、何者かによる妨害工作が行われました。株主提案をしていた際も杉浦氏は繰り返し説明会を行っていましたが、妨害されたことはないと言います。明らかに、この件の追及を恐れている人物がいることを示しています。

オウケイウェイヴは、アップライツの株式の取得は無効であると抗議。「当社株主のためにも、本件については投資額及び損失額が甚大であること、取引の実態があまりに不透明であることから、民事による法的手段に留まらず、その実態解明のため、ありとあらゆる手段を講じる所存であり、遅かれ早かれ刑事による法的手段にも及ぶこととなります」(「連結子会社の取締役会決議及び臨時株主総会決議に関する通知の受領並びに反対意見表明に関するお知らせ」より)とアップライツ側に警告しています。

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