50億円取立不能のOKWAVE、問題発覚前に元社長が大量の株式を売却

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Q&Aメディアの運用やオンライングリーティングカードサービスなどを提供するオウケイウェイヴ<3808>が、2022年4月19日49億3,300万円の債権の取立不能または遅延のおそれがあると発表しました。2021年6月期第4四半期から資金の運用を取引先に委託しており、元金と運用益の回収が危うくなったとの説明をしています。

オウケイウェイブは2021年12月末時点で総資産が91億2,500万円、純資産が66億1,500万円、流動資産が75億4,100万円の会社。50億円の取立不能は会社の存続を揺るがす大問題に発展する可能性があります。

この問題が明るみに出る前に元代表取締役社長の松田元氏は持株を大量に売却。保有比率を21.88%から0.08%まで引き下げたと報告しています。

この記事では以下の情報が得られます。

・オウケイウェイブが債権取立不能になるまでの流れ
・松田元氏の保有比率の変遷

事業売却で売上高は8割減少

オウケイウェイブは、2021年6月にソリューション事業の一部を、会社分割で新設したPRANZA(東京都港区)に承継させたうえで、全株式をPKSHA Technology<3993>に売却していました。

オウケイウェイヴはこの株式譲渡により、2021年6月期に60億円の特別利益を計上しています。巨額の資産運用を外部の会社に委託した背景には、このM&A によって売却益が得られることがあったものと考えられます。

60億円もの利益を手にしたものの、M&Aによってオウケイウェイヴの本業が弱体化し、業績が悪化するのは誰の目にも明らかでした。

※営業利益の目盛は右軸
2018年6月期 2019年6月期 2020年6月期 2021年6月期 2022年6月期
予想
売上高(百万円) 3,786 4,892 4,795 2,196 430
前期比 157.0% 129.2% 98.0% 45.8% 19.6%
営業利益(百万円) 1,216 1,071 -926 -516 -1,353
前期比 724.6% 88.1% - - -

決算短信より筆者作成

売却前の2020年6月期の売上高は47億9,500万円、2021年6月期は54.2%減となる21億9,600万円。2022年6月期の売上高はそこから更に80.4%減の4億3,000万円を予想しています。

売上高の減少に留まらず、赤字幅も拡大しています。2021年6月期の営業損失は5億1,600万円でしたが、2022年6月期は13億5,300万円の営業赤字見込みです。

オウケイウェイヴは一時的に業績が悪化しても、譲渡資金を原資とし、事業の発展と加速に取り組むとしていました。事実、2021年12月にコーポレートベンチャーキャピタルを設立し、20億円を出資して運用を開始しています。オウケイウェイヴはこのファンドを通して、2021年12月に音楽制作のアップライツ(東京都港区)を買収しました。

しかし、34億2,900万円もの資金は外部の資産運用会社に預けていました。運用成果を15億300万円も出しており、適切に運用されていると認識していたといいます。34億円の出資に対し、1年ほどで15億円もの利益を生んでいます。投資効率が尋常ではありません。

オウケイウェイヴによれば、資産運用会社は契約で定めた投資運用を行っておらず、入金された資金を他の投資者への支払いに充てていたことが判明したといいます。いわゆるポンジスキームです。会社の命運を握っていた資金を、典型的な詐欺スキームで消失しかけていることになります。

気になる株式売却のタイミング

オウケイウェイヴは兼元謙任氏が設立したオーケーウェブが前身。2000年にQ&AメディアOKWAVEをリリースしました。2006年6月にセントレックスに株式を上場。2017年9月に松田元氏が取締役に就任します。2018年7月に創業者の兼元氏が代表取締役会長に、松田氏が代表取締役社長になりました。

松田氏は2014年に情報商材を販売する「アルケミストアカデミー」「平成松下村塾」などで講師を務めた過去があり、その人脈や経歴を疑問視する声が絶えませんでした。

オウケイウェイヴは2020年10月にエクシア合同会社(東京都港区)に暗号資産交換業のLastRoots(東京都港区)の全株式を売却しています。エクシア合同会社は日本の投資会社で、高利回りを標ぼうしてインターネットを中心に資金を募っています。しかし、金融庁の「金融商品取引業者」に登録されていないことがSNSなどで問題視されていました(ただし、エクシア合同会社はみらいアセットマネジメント(東京都港区)を買収しており、商号変更した子会社のエクシア・アセット・マネジメントが登録されています)。

松田氏が経営に関わった後のオウケイウェイヴは、ネガティブなイメージを払拭できませんでした。

松田氏は2019年7月にオウケイウェイヴ株の保有比率を8.94%から22.0%までいっきに高めました。兼元氏から130万株を取得したのです。兼元氏の保有割合は24.49%から9.18%まで低下しています。松田氏の会社への支配力は強まりました。

松田氏が保有するオウケイウェイヴ株式の変動をみる

松田氏は2020年4月に代表取締役社長を辞任。福田道夫氏が新社長に就任しました。松田氏は2020年2月から3月にかけて、保有する株式を大量に売却。当時、過去にオウケイウェイヴが発行した新株予約権付社債による5億円の償還期限が迫っており、償還猶予を求めるか検討している最中でした。このときの大量売却がインサイダー取引にあたる可能性があると指摘されたのです。松田氏は引責辞任しました。なお、この取引は第三者委員会の調査報告によって適切な取引であったことが確認されています。

松田氏は2021年12月20日、保有比率が21.88%から10.41%まで下がったことを報告。報告義務発生日は2020年4月27日となっており、インサイダーが疑われた期間のものと考えられます。その翌日の2021年12月21日、94万株あまりを売却したと報告しています。これによって保有比率は0.08%まで下がりました。

松田氏は兼元氏から株式を取得する際、資金を借り入れるために担保設定をしており、21日に報告した分は担保権の行使だと考えられます。

担保となっていた54万株はネットワークビジネスを展開するワールド・レップ・サービス(東京都中央区)の代表取締役会長・許善政氏の手に渡りました。許善政氏のオウケイウェイヴ株の保有比率は4.32%となっています。

気になるのは松田氏が株式を売却したタイミング。2020年3月ごろのオウケイウェイヴ株は1株500~1,000円前後で売買されていました。PKSHA Technologyに事業売却したのは2021年6月。このM&Aは、会社分割で新会社を設立するなど、大掛かりなもの。1年以上前から構想や計画を練っていたものと考えられます。また、本業が一時的にではあれ骨抜きになるプロジェクトは、会社に強い影響力がある人物が牽引したと考えるのが普通でしょう。

主力事業を売却しても会社を成長させる見込みがあれば、インサイダー取引を疑われてまで焦って売却する必要はありません。

オウケイウェイブの株価は4月20日にストップ安の198円となりました。

債権取立不能問題の行方に注目が集まっています。

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