餃子の王将が業績好調、なぜ競合の日高屋は遅れをとったのか

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画像はイメージ(Photo by フリー素材.com)

王将フードサービス<9936>の業績が好調です。2022年3月期第2四半期の売上高は前期比3.4%増の404億6,300万円、営業利益は同33.5%増の31億9,200万円となりました。通期の売上高を前期比4.0%増の838億5,400万円、営業利益を同15.1%増の69億8,900万円と予想しています。冴えないのが競合のハイデイ日高屋<7611>。2022年2月期第2四半期の売上高は前年同期比19.2%減の113億9,600万円、26億200万円の営業損失(前年同期は20億700万円の営業損失)を計上しました。通期は28億円の営業損失を予想しており、赤字から抜け出すことができません。

王将はコロナ禍に合わせてテイクアウト・デリバリーを強化しました。更に需要の変化を敏感に読み取り、ニーズに合わせた商品を提供しています。店内飲食以外のサービスが両社の明暗を分けました。

この記事では以下の情報が得られます。

・王将と日高屋の業績比較
・王将のテイクアウト・デリバリーの売上比率と商品展開の内容

コロナ後の売上高の減少を8%に抑え込んだ王将

王将と日高屋の半期ごとの売上高、営業利益を比較してみます。新型コロナウイルス感染拡大前の王将の2020年3月期第2四半期の売上高は425億6,800万円でした。コロナ禍の2021年3月期第2四半期の売上高は391億4,200万円。わずか8.0%しか減少していません。一方、日高屋の2020年2月期第2四半期の売上高は211億200万円でしたが、2021年2月期第2四半期は33.1%もの減少となる141億900万円となりました。

■王将、日高屋半期ごとの売上高・営業利益の比較(単位:百万円)

■王将半期ごとの業績推移(単位:百万円)

2020年3月期
第2四半期
2021年3月期
第2四半期
2022年3月期
第2四半期
売上高 42,568 39,142 40,463
前期比 104.2% 92.0% 103.4%
営業利益 4,020 2,391 3,192
前期比 105.6% 59.5% 133.5%

決算短信をもとに筆者作成

■日高屋半期ごとの業績推移(単位:百万円)

2020年2月期
第2四半期
2021年2月期
第2四半期
2022年2月期
第2四半期
売上高 21,102 14,109 11,396
前期比 100.0% 66.9% 80.8%
営業利益 2,280 -2,070 -2,602
前期比 89.0% - -

決算短信をもとに筆者作成

王将は2022年3月期第2四半期の売上高が404億6,300万円となり、コロナ前の2020年3月期第2四半期との差はわずか4.9%となりました。日高屋は2022年2月期第2四半期の売上高が113億9,600万円でコロナ前と比べて46.0%もの開きがあります。この売上差が損益にも影響を与えており、日高屋は2022年2月期第2四半期に赤字幅を広げました。

売上高にこれだけ差が生じた主要因はテイクアウト・デリバリーだと考えられます。2020年3月期の時点で、王将直営店の売上高に占めるテイクアウト・デリバリー比率は19.1%でしたが、2021年3月期には33.4%まで増加しています。

■王将の直営店売上テイクアウト・デリバリー比率(単位:百万円)

王将テイクアウト・デリバリー比率
※有価証券報告書より筆者作成
2020年3月期 構成比率 2021年3月期 構成比率
店内飲食 63,630 80.9% 48,971 66.6%
テイクアウト・デリバリー 14,995 19.1% 24,608 33.4%
売上全体 78,625 100.0% 73,579 100.0%

王将は店内飲食だけを見ると、2021年3月期に売上高を前期比23.1%落としました。落ち込んだ分をテイクアウト・デリバリーが補っています。テイクアウト・デリバリー比率は2022年3月期第2四半期に39.3%まで上がりました。

日高屋のテイクアウト比率は2021年8月に入ってようやく売上高の1割を超えるようになりました。

■日高屋テイクアウトの売上高と全体に占める割合の推移

テイクアウト比率
※2022年2月期第2四半期決算説明会より

狭小地にテイクアウト専門店を出店

王将はコロナ前からテイクアウトサービスを拡充しており、事前決済システム「EPARKテイクアウト」を2019年10月に全店導入していました。コロナでその需要が一気に膨らみました。デリバリーは2020年3月末時点で76店舗に留まっていましたが、1年後には413店舗まで拡大しています。

王将が優れているのは、店舗オペレーションに素早くテイクアウト・デリバリーを定着させたことだけではありません。需要を正確に読み取ってそれに応える商品を開発しています。

電子レンジで容器ごと温められるレンチンシリーズは2020年12月に発売を開始しました。テイクアウト・デリバリーは冷めるのが弱点の一つですが、このシリーズで手間なく温められるようにしました。2021年2月には家庭の鍋1つで調理ができる1人前の袋詰めラーメンを店頭販売しています。この商品は2018年6月に販売していたラーメンパックを1人用にリニューアルしたもの。コロナ禍で生活スタイルが変化した単身世帯の需要に応えました。

ジョイ・ナーホ
※決算説明資料より

2021年6月には池尻大橋にテイクアウト・デリバリー専門店「ジョイ・ナーホ」をオープンしました。この店舗はオフィスビルの1階にある狭小立地型の店舗で、王将にとっては初の出店形態になります。

王将や日高屋は都市部の繁華街立地に店を構え、高回転させることで収益性を確保していました。しかし、リモートワーク、遠隔授業の推進によって人通りが少なくなると、立地特性を活かすことができません。1等地は賃料が高く、損益分岐点を下回るようになります。これまでの常識が通じず、出店には二の足を踏みます。

王将は狭小立地でリスクを低減し、新たな需要を獲得する方針を打ち出しました。新型の店舗が成功すればフランチャイズ展開にも弾みがつきます。

2021年3月期の王将の店内飲食の客単価は923円。テイクアウト・デリバリーは1,400円でした。テイクアウト・デリバリーの方が1.5倍も高いのです。自宅で食事をする顧客には、店内で食べるのとは明らかに異なるニーズがあります。飲食業界は従来のビジネスが通用しなくなりました。

オミクロン株の出現でまん延防止等重点措置による時短営業で飲食店は再び影響を受けます。飲食店はウィズコロナ時代の経営スタイルを早期に確立する必要があるのかもしれません。

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