【企業力分析】任天堂 営業効率・生産効率が急落の10年

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※画像はイメージです

今回は、ポケモンGOで話題になっている任天堂<7974>を分析した。外を歩かなければならないゲーム性などで、ゲームの不健康なひきこもりイメージを打破したスマホゲーム、ポケモンGO。これほど一気に広まったスマホゲームはないと言われている。コダックと聞いて、ポケモンを思い出す人も写真フィルムを思い出す人もどちらにも分かりやすく分析してみた。

2007~16年3月期までの10年間を分析した。

 企業力総合評価は、184.43P→184.48P→184.44P→184.45P→178.59P→128.97P(2012年)→153.39P→150.57P→172.85P→166.93Pと推移している。前半にはおよばないが、かなり企業力総合評価を回復させた。企業力総合評価を悪化させたのは、営業効率、資本効率であることが一目瞭然である。流動性・安全性など財務はびくともしない。

 営業効率(もうかるか)・資本効率(資本の利用度)は、天井値から一気に底値に落ちた。13年のV字回復は、赤青ゼロのところまで戻し、売上高経常利益率1.65%。ここに戻したところが、いかにも優良企業と言える。翌年足踏みしたが、15年、さらに改善した。

 生産効率(人の利用度)は天井値から徐々に悪化トレンドだ。

 資産効率(資産の利用度)は赤信号領域だ。しかし、任天堂のような超優良企業は純資産や現金預金などが多く、総資産が多くなる傾向があり、資産効率は悪化するばかりだ。増える資産内容がいいので問題とはしない。

 流動性(短期資金繰り)、安全性(長期資金繰り)は天井値で全く問題がない。

 企業力総合評価、各親指標で読めるのは、V字回復しつつも任天堂は何か質的変化が起きた可能性があるということだ。

 営業効率と生産効率の各下位指標を見ていく

 売上高を左から右に読むと(赤の下線)、随分減少していることが分かる。最も売り上げが多かったのは09年1兆8386億円で、少なかった16年は5044億円と2009年の27%ほどになっている。ここ数年間は激しい減収にあることが分かる。

 売上高経常利益率を左から右に読むと(ピンクの下線)、30%近くから5.71%と率を大きく落としている。もうからなくなっている。

 1人当たりの売上高を左から右に読むと(青の下線)、随分減少している。08年3億5591億円から、直近8854万円と4分の1である。

 売上高の減少下で、従業員を増やしていることに驚く(緑の下線)。

 数字を見ると、超優良企業から、財務体質がよい優良企業になったと言えるのかもしれない。

 ポケモンGOを開発・配信しているのは、米グーグルから独立した米ベンチャー企業のナイアンティックである。任天堂が32%を出資する持分法適用会社のポケモンはポケットモンスターの権利保有者としてライセンス料と開発運営協力に伴う対価を受け取る。任天堂の業績のインパクトは、グーグルに30%支払った残りの70%をナイアンティックとポケモンで分け(分配比率は不明)、ポケモンの利益の持分比率32%が、任天堂の利益になる。この持分法適用会社、ナイアンティック、グーグルとの協業によって生まれた商品であることが、任天堂の以前のような爆発的売り上げ・利益増をもたらさない理由と言える。

 任天堂の今後が心配と思われる点は、従業員増加を上回る増収を自ら作り出せなかたことだ。激しい減収の中で従業員数の増加はカリスマ依存の会社に多い兆候である。

 任天堂の優れている点は、他社に委ねて収益を生むキャラクターが多数存在することだ。どんな方法であれ自社の資源を収益に変えるのも企業の実力のうちだ。

まとめ

 超優良企業と言われた任天堂は、以前の輝きを失った状況かもしれない。そうした中で、ポケモンGOに関連した商品開発は、過去に蓄積した経営資源の活用である。自社に眠る資源を棚卸してみよう。生産効率の不合理な動きは、任天堂の大きな不安となる。今後どのように人材を活用していくかを注視したいと思う。

文:株式会社SPLENDID21 代表取締役社長 山本純子