再感染の死亡リスクは2倍か 新型コロナで知っておくべきこと

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再び感染拡大の波が押し寄せつつある(Photo By Reuters)

「ワクチンも接種したし、コロナなんてただの風邪」と油断していないだろうか。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の警戒感が日に日に緩んでいる。東京都では12月8日に新規感染者が1万4104人(前週比1772人増)となったが、第7波までの騒動とは様変わりで大きな話題にはなっていない。政府や自治体も緊急事態宣言やまん延防止等重点措置を出す動きはなく、逆に新型コロナの感染症法上の扱いを現在の2類から季節性インフルエンザと同じ5類とする見直しが検討されている。新型コロナは「克服」できたのか?

実際のコロナ感染者数は2万2000人超か

そう楽観はできないだろう。現在、全数把握をしていないので、自治体が発表している新規感染者数は第7波以前と同列に比べられない。これまでの数値と比較可能なのは死亡者数だ。同日の死亡者数は20人で、第7波の1日あたりの平均死亡者数14.5人を超えている。

現在の感染の主流が第7波と同じオミクロン株であり、死亡率が同じ(0.90%)と考えれば、全数把握した場合の都内新規感染者は単純計算で2万2042人に達していることになる。第7波のピークだった2022年7月28日の3万9534人(都外からの検体持ち込み、他県陽性者登録センター等分を除く)には及ばないが、感染拡大は続いており、ピークを更新する可能性もありそうだ。

死亡者数が最も多かったのは感染のピークから半月ほど後だった。第7波では8月13日の32人がピークで、死亡者が30人を超えたのは9月8日が最後。第8波で死者が30人に達すれば、第7波と同レベルの感染拡大と言える。33人以上となると、第7波を超えて過去最大の感染爆発が起こっていると推測できる。

コロナ再感染で「死亡リスクは2倍以上」との研究も

窓を閉め切り換気がしにくい冬季は感染の拡大が懸念されており、実際に北日本で感染拡大が先行している。岩手県では12月5日に県立病院職員の欠勤者が200人を超え、第7波のピーク時と同水準になっていることが判明した。本格的な冬に入る東京も、まもなく社会的な影響が出てくるだろう。

さらに気になる情報もある。米国際医学誌「ネイチャー・メディシン」で、高齢者が新型コロナに再感染すると、ワクチン接種状況にかかわらず初回感染時よりも合併症や入院のリスクが増すとの報告があった。米退役軍人のデータを分析したところ、再感染者は初回感染患者に比べて入院リスクが3倍以上、死亡リスクも2倍以上に跳ね上がったという。日本でもブレークスルー感染が増加しており、今後は再感染による重症化も懸念される。

現在もコロナウイルスを直ちに死滅させる治療薬はなく、有効な対策はワクチンのみだ。埼玉県は新型コロナ陽性者を対象にした積極的疫学調査で、ワクチン接種の有無を調査した結果を11月29日に公表している。それによると50代以上で2回接種した感染者は未接種の感染者に比べると重症率、死亡率とも有意に低下していることが判明した。40代以下は未接種者で重傷者や死亡者はいたが、2回接種者ではいなかった。

感染拡大が防げない以上、特にブレークスルー感染で重症化リスクがある50代以降の中・高年齢層は、ワクチン接種で自衛するしかない。まだ「風邪のようなもの」と油断するには早すぎるようだ。

文:M&A Online編集部

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