「東京のおへそで、会いましょう」。こんなキャッチフレーズを発信しているのが国分寺市だ。東京の郊外に位置し、新宿からJR中央線快速電車で吉祥寺や三鷹を通り過ぎて30分ほど。東京のおへそ、つまり中心を自認する理由とは?
では、東京の中心を訪ねてみよう。目指すは市内富士本3丁目のとある公園。都立国分寺高校からほど近い、住宅に囲まれた場所にあった。公園正面に「東京都の中心(重心)」と記した看板が立っている。
重心とは重さの中心のこと。東京都全体(島しょ部は除く)を平面と仮定した場合、ある一点でうまくバランスがとれる位置がある。それがこの地点なのだ。お墨付きを与えたのは「数学甲子園」の主催で知られる日本数学検定協会(東京都台東区)。2005年の「数学の日」(3月14日)に合わせ、公園に看板が設置された。
当の公園はというと、「富士本90度公園」。90度=直角を連想する一風変わった名前だが、由来は分かっていないらしい。訪ねるのなら、国分寺駅より2つ先の国立駅が最寄り駅。北口からバスを利用し、都営富士本住宅もしくは富士本3丁目で下車して5分ほどで着く。
「富士本90度公園」はその思わせぶりな名前とは裏腹に、何の変哲もない小さな公園。ベンチ2つに砂場と遊具と健康器具、それに災害時の給水拠点となる井戸があるだけ。「東京都の中心」といっても、特別なモニュメントがあるわけでもなく、興ざめを覚悟した方が良い。
気を取り直したいのであれば、本格的な市内観光だ。奈良時代中頃の天平13年(741年)、聖武天皇が仏教で国を安定させようと、全国60余国に建立を命じたのが国分寺。「国分寺市」は、現在の東京に神奈川、埼玉の一部を含めた武蔵国に国分寺が置かれたことに由来する。
かつての武蔵国分寺の境内は東西1.5㎞、南北1㎞の広さ。金堂や講堂、鐘楼、中門などの建物跡が発見され、周囲には高さ60mを誇ったという七重塔の礎石も残る。また、国分寺崖線下から湧き出す清流の透明度は格別だ。辺りは散策にもってこいのスポットが広がる。
天平の昔、武蔵国の重心にほかならなかった国分寺。今日、「東京のおへそ」を自認する国分寺市だが、歴史をひも解けば、その“称号”も味わい深く思えてくる。
文:M&A Online編集部