開館70周年を迎えた「国立国会図書館」とは

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国立国会図書館が6月5日に開館70周年を迎えた。日本の図書館の総本山で、所蔵数は4270万点(2018年3月末)に及ぶ。ただ、一般にはその名称からして、敷居が高くて近寄りがたい存在に違いない。そんなお堅いイメージのある国立国会図書館を、「沿革」「使命」「納本」などのキーワードで読み解いてみるとー。

「国会」のための図書館と「ナショナル・ライブラリー」の使命

70年前、ここに庁舎を置いた(現迎賓館、東京都港区)

国立国会図書館は東京・永田町の国会議事堂の隣接地に1961年、庁舎を構えた。終戦から3年後の1948(昭和23)年6月に開館した国立国会図書館だが、この間、仮庁舎としていたのが赤坂離宮(現迎賓館)。この建物は1909(明治42)年に東宮御所(皇太子の居所)として建設された西洋風宮殿建築。しかし、本来の東宮御所として使われることはあまりなく、戦後は国立国会図書館のほか、内閣法制局、東京オリンピック組織委員会などが一時置かれた。

新憲法では国会が国権の最高機関と位置づけられた。国会がその役割を果たすためには内外の資料をそろえ、調査機能を備えた一大図書館を持たなければならないというのが設立の理念で、米国の議会図書館を範とした。

所蔵の面からみると、戦前からの二つの流れがある。旧憲法下の帝国議会両院(貴族院・衆議院)付属図書館が収集した資料と、戦前に唯一の国立図書館だった帝国図書館の蔵書を基礎にしている。このことからも分かる通り、国会のための図書館であると同時に、一国の出版物の網羅的な収集と保存を目的とするナショナル・ライブラリー(中央図書館)としての使命を併せ持つ。

すべての出版物の納本を義務づける

国立国会図書館の開館に合わせ1948年にスタートしたのが本格的な納本制度だ。国内で発行されたすべての出版物(小冊子、楽譜、地図、点字資料なども含む)を国立国会図書館に納本することが発行者などに義務づけられた。納本制度そのものは明治初期から導入されていたが、主に検閲を目的とするものだった。

現在の納本制度では会員限定で配布された非売品の図書やフリーペーパーの雑誌・新聞も対象となる。ちなみにカレンダーは対象外。納本を怠った場合の罰則もある。出版物の小売価格の5倍に相当する金額以下の過料に処すとの規定があるが、一度も適用されたことはない。アダルト本の類ももちろん納本対象だが、こうした出版物は納本率が低いのが実態という。

2017年度は約80万点を受け入れ 

国権の最高機関・国会を支える使命を担う

資料収集の根幹をなす納本制度だが、国内の出版物でも古書や、利用が多く複数部必要な資料は購入している。外国の出版物も日本関係の資料などを中心に購入するほか、各国の国立図書館との交換で収集。これらの収集した資料については書誌データベースを作成し、インターネットで検索できる。

2017年度中、新たに図書約20万点、新聞・雑誌、年鑑など逐次刊行物約53万点、電子資料など非図書資料約6万点の計79万点を受け入れ、3月末時点の所蔵数は合計4270万点となった。

国会の会議録は帝国議会時代を含め、すべてをデータベースに収めている。また、帝国議会から現在まで提出された法案の審議経過などの情報もデータベースで検索できる。

増え続ける所蔵資料は東京本館のほか、2002年に開館した国立国会図書館関西館(京都府精華町)、2000年にオープンした児童書専門の「国際子ども図書館」(旧帝国図書館。東京・上野公園)に分散配置している。

館外貸し出しは行わず

国立国会図書館「東京本館」

国立国会図書館を利用できるのは満18歳以上(国際こども図書館を除く)。資料閲覧するには利用者登録が求められる(本人確認書類など必要)。一般の図書館と違って個人への館外貸し出しは行っていない。近所の公共図書館や大学図書館から資料を取り寄せることはできる。

7月11日には東京本館で、「納本制度の過去・現在・未来」と題し、デジタル化時代における納本制度のあり方を考える70周年記念シンポジウムを予定している。

  文:M&A Online編集部