マスク氏、ツイッター買収を中止したら違約金で「破産」する?

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買収を破棄すれば違約金を課せられるマスク氏(Photo By Reuters)

「買うの?それとも買わないの?」ツイッター買収で合意した米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が「心変わり」したのではないかとの情報が飛び交っている。合意によると、マスク氏が買収計画を一方的に破棄した場合は10億ドル(約1300億円)の違約金を支払う義務があるという。マスク氏にとっては、大きな痛手になるのではないか?

マスク氏に違約金の「痛手」なし

結論を先に言えば、違約金を支払っても痛くも痒くもない。マスク氏の2020年の報酬総額は約66億ドル(約8500億円)。2021年の報酬総額は明らかになっていないが、マスク氏は同年の納税額は110億ドル(約1兆4000億円)以上とツイートしている。

昨年の米国所得税の最高税率は、連邦レベルの税率と州レベルの平均税率を合わせて42.9%。逆算すればマスク氏の昨年の報酬総額は約256億ドル(約3兆3000億円)となる。

一昨年に比べて昨年の報酬額が高騰したのは、テスラのストックオプション(新株予約権)による報酬の行使期限を目前に控え、同社株を段階的に売却したため。売却額だけでも140億〜200億ドル(約1兆8000億〜約2兆6000億円)と見られている。マスク氏にとって10億ドルの損失など、節税対策にすらならないほどの「はした金」にすぎない。

本音は「値切り」だが、やりすぎると…

もっともマスク氏の「揺さぶり」は、ツイッター買収の「値切り」である可能性もある。マスク氏はツイッターの偽アカウントが同社の説明する5%を大きく上回る20%に達するのではないかと疑義をはさんだ。その上で「ツイッターの主張よりも質が悪いものに、合意した金額を支払うことはできない」と、買収価格の引き下げを求めている。

ツイッターのパラグ・アグラワルCEOは「偽アカウントを特定するために公開情報と非公開情報の双方を利用する必要があるため、推定しかできない」と主張した。これに対しマスク氏はスポンサーにとっては広告の効果を知るために正確なアカウント数を知る必要があるとして、「ツイッターの財務健全性にとって基本的なことだ」と反論。議論は平行線のままだ。

とはいえ、どこまでも買収交渉を長引かせることはできない。合意では10月24日までに手続きが完了されなければ、買収交渉が打ち切られる可能性がある。さらに両社は売り主であるツイッターが自発的に他の買い主候補を勧誘することはできないが、第三者からの自発的な提案については一定の要件が満たされた場合に限り交渉を認める「ノーショップ条項」を結んでいる。

交渉が難航しているのをみた第三者がツイッターに買収提案を持ち込めば、状況がひっくり返るかもしれない。マスク氏も本気でツイッターを買収したいのであれば、値切るのもそこそこにしておいた方が良いだろう。

文:M&A Online編集部

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