新型コロナの飲み薬「モルヌピラビル」はこれまでの治療薬と、どこがどう違うのか

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大手製薬会社メルクの日本法人MSD(東京都千代田区)が、新型コロナウイルス感染症の飲み薬「モルヌピラビル」について、厚生労働省に製造販売承認を申請した。承認されれば6番目の治療薬となり、軽症、中等症の患者向けの飲み薬としては国内初となる。

モルヌピラビルは、遺伝子であるDNAを鋳型として生成され、たんぱく質の合成などを担うRNAに、変異を起こさせることでウイルスの増殖を抑え、感染症を治療する。これまでの治療薬とはどこが違い、どのような効果があるのだろうか。6種を比べてみると…。

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ウイルスを変異させ増殖を抑制

モルヌピラビルは、米国のエモリー大学(ジョージア州)が100%出資する非営利バイオテクノロジー企業のDrug Innovations at Emory (DRIVE), LLCが発明したもので、メルクなどが連携して開発を進めている。

RNAを構成するアミノ酸に構造が似ている別の物質をRNAに取り込ませ、ウイルスに変異を生じさせることで増殖を抑えるリボヌクレオシドアナログといわれる技術を用いている。

臨床前の試験では予防投与、治療、感染防止などで効果が認められており、変異株についても効果があった。また、他の薬剤との併用や食事に関する制限などは必要ないという。

重症化リスクの高い軽症、中等症の成人患者を対象に行った試験では、偽薬を投与した被験者699人中、入院、死亡したのが68人(入院、死亡リスクは9.7%)に達したのに対し、モルヌピラビルを投与した被験者では709人中48人(同6.8%)にとどまり、入院、死亡リスクは30%低下した。

すでに英国で重症化リスクの因子を一つ以上持つ軽症、中等症の成人患者の治療薬として承認されており、日本でも政府が薬事承認後に約160万人分を購入することを決めている。

軽症や中等症向けが3種に

これまでに新型コロナウイルスの治療薬として承認されたのは、新型コロナウイルスがヒトの細胞に取りつく際に必要となるスパイクたんぱく質に結合し、スパイクたんぱく質の機能を奪うことでウイルスの増殖を抑える「ソトロビマブ」、同様の仕組みを持つ「カシリビマブ、イムデビマブ」、エボラ出血熱治療薬として開発された「レムデシビル」、感染症や肺炎などの治療薬として用いられているステロイド薬の「デキサメタゾン」、関節リウマチ薬として承認を取得している「バリシチニブ」の5種。

「レムデシビル」「デキサメタゾン」「バリシチニブ」の3種は重症者向けで、軽症や中等症向けは「ソトロビマブ」と「カシリビマブ、イムデビマブ」の2種。モルヌピラビルが承認されれば、軽症や中等症向けが3種となる。

「レムデシビル」「カシリビマブ、イムデビマブ」「ソトロビマブ」の3種は点滴投与で、「デキサメタゾン」と「バリシチニブ」は経口投与となる。

【承認を得た新型コロナウイルス感染症治療薬5種とモルヌピラビル】

名称 種類 投与法
レムデシビル エボラ出血熱治療薬 点滴
デキサメタゾン ステロイド薬 経口など
バリシチニブ 関節リウマチ薬 経口
カシリビマブ、イムデビマブ 中和抗体薬 点滴
ソトロビマブ 中和抗体薬 点滴
モルヌピラビル リボヌクレオシドアナログ薬 経口

文:M&A Online編集部