2014年に公開され、国内興行収入83.3億円の大ヒットを記録した『STAND BY MEドラえもん』。『ALWAYS三丁目の夕日』『永遠の0』の山崎貴と『friendsもののけ島のナキ』の八木竜一が共同監督として名を連ね、原作シリーズの鉄板エピソードを再構築したことで、興行収入もさることながら、大人も涙する「ドラ泣き」が話題を呼びました。
そんな前作から6年ぶりの続編にしてドラえもん生誕50周年記念作品として、本日公開(11月20日)されたのが『STAND BY MEドラえもん 2』です。
●歴代のドラえもんシリーズ(映画)国内興行収入ランキング
順位 | タイトル(公表年) | 興行収入 |
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1 | 『STAND BY ME ドラえもん』(2014年) | 83.8億円 |
2 | 『ドラえもん のび太の宝島』(2018年) | 53.7億円 |
3 | 『ドラえもん のび太の月面探査記』(2019年) | 50.2億円 |
4 | 『ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』(2017年) | 44.3億円 |
5 | 『ドラえもん 新・のび太の日本誕生』(2016年) | 41.2億円 |
(一社)日本映画製作者連盟「日本映画産業統計」よりM&A Online編集部作成
前作では”のび太の結婚前夜”と”さよならドラえもん”のエピソードが再構築されましたが、今回も号泣必死の鉄板エピソード“おばあちゃんの思い出”編を中心に結婚前夜の続きも描いてます。
前作の秦基博による主題歌『ひまわりの約束』が大ヒットを記録しましたが、今回の主題歌は俳優でありアーティストとしても活躍が目覚ましい菅田将暉の『虹』が起用されました。
ドラえもんとのび太が一緒にいるのが日常になった<現在>のある日、のび太は部屋でくまのぬいぐるみを見つける。それは幼稚園の頃に亡くなってしまったおばあちゃんが繕ってくれた、大切な思い出の品でした。
大好きだったおばあちゃんを思い出したのび太は、タイムマシンでおばあちゃんに会いに行きたいと提案。反対するドラえもんだったが、直接会わずに様子を見たらすぐ帰ることを条件に、のび太が3歳だった<過去>へと出発します。
会いたい気持ちを抑え、陰からこっそりおばあちゃんのことを見ていたのび太。しかしひょんなことから、おばあちゃんに見つかってしまいます!
小学生になったのび太の姿を見て驚きつつも、あの頃と同じように優しく受け入れてくれるおばあちゃん。
「あんたのお嫁さんをひと目見たくなっちゃった」
そんなおばあちゃんの一言で、のび太とドラえもんは、今度は<未来>へと出発します。
目指すは、しずかとの結婚式当日──
しかし、会場は騒然となっていました。なんとのび太が逃げたというのです…。
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本作ではそのキャッチコピー「のび太、逃げた」の通り、のび太のマリッジブルーが描かれます。
「マリッジブルー*」というと女性特有のイメージが強いですが、当然男性の側にもあります。今どき、男性が一手に家庭を支えるという考え方は古めかしいものでしょうが、それでも、結婚式の準備、パートナーとの将来、家庭を作っていくことなど将来を考えるタイミングになると、やはり男性はいろいろ身構えてしまい思い悩んでしまうようです。
*結婚を控えた人が間近に迫った結婚生活に突然不安や憂鬱を覚える心理現象のこと
のび太は、あこがれの存在だったしずかちゃんを妻に迎えるのですから、その緊張はひと際強いものだったのでしょう。その結果、のび太は結婚式当日、突然姿を消します。
ジャイアンは怒り、スネ夫は呆れるばかりです。そこで奮闘するのがおばあちゃんとの約束を守るために現れた<現代>のび太。しかし、何せダメな小学生のび太のすることですから簡単には進みません。
この辺りのエピソードは男性が共通して持っている弱い部分を突き付けられているような気がして、思いのほか胸に刺さります。そして、ここからは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』ばりのタイムトラベルアクションが展開されます。
“おばあちゃんの思い出”編をベースにした前半は、他のドラえもん作品と比べると、とてものんびりした時間が過ぎますが、結婚式場からのび太が逃げてからの後半戦は一気にテンポアップ。タイムマシンで過去から未来まで行き来し、さらに“とある道具”を巡り、タイムリミットサスペンスのような展開に。この時間の往来のエピソードなどは、その仕組みの説明も含めてどちらかというと大人向けのエピソードと言えます。
STAND BY MEブランドのドラえもんは、従来のターゲットである子供たちより、“かつて子供としてドラえもんを楽しんでいた大人たち”に向けて作られています。
前作ではまだ手探りの感があった3DCGアニメーションも、6年経ち技術面の安定を感じられる作りに仕上がっています。タイアップによって未来都市のいたるところに実在の企業名が出ているのも変わりません。この描写シーンを企業に支配された未来都市像と表す意見もありますが、ご覧になった時の感想はいかがでしょうか?
最後に。物語の展開は、前作『STAND BY MEドラえもん』からつながっているので、できれば前作をご覧になった上で劇場に向かわれることをお薦めします。
文:村松 健太郎(映画文筆家)
原作:藤子・F・不二雄
監督:八木竜一
脚本・共同監督:山崎貴
音楽:佐藤直紀
主題歌:菅田将暉「虹」(Sony Music Labels Inc.)
キャスト:水田わさび 大原めぐみ かかずゆみ 木村昴 関智一 宮本信子 妻夫木聡
配給:東宝
公式サイト:doraemon-3d.com
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