2005年に制作された映画『金の亡者たち(原題:돈 Money)』は、韓国の金融の中心地ー漢江(ハンガン)・汝矣島(ヨイド)を舞台に繰り広げられる経済サスペンス。一攫千金を目指す新人トレーダーがひょんなことから違法取引を行う謎のブローカーと出会い、巨額の富を得ながらも追い詰められていく姿を描く。
気弱な新人トレーダーを「毒戦 BELIEVER」「応答せよ1988」のリュ・ジュンヨルが熱演。ユ・ジテ演じる謎のブローカーとのスリリングな対決が話題となり、動員数300万人と韓国の経済サスペンスとしては異例の大ヒットを記録した。
金融街である漢江・汝矣島にあるDM証券に入社したイルヒョン(リュ・ジュンヨル)は、トレーダーとして一攫千金を夢見る。しかし優秀な同僚に後れをとり、半年経っても満足な成果を上げられずにいた。
ある日上司であるユ(キム・ミンジェ)から謎のブローカー・ボノピョ(ユ・ジテ)を紹介される。ボノピョの指示通りに行った取引でいきなり5億ウォンもの大金を稼ぎ出したイルヒョンは、瞬く間に社内トップの成績に躍り出る。
うだつの上がらないお荷物からトップトレーダーにのし上がったイルヒョンは、ボノピョが持ちかける高額の取引を次々と成立させ、莫大な収入を得るようになる。
その派手な稼ぎ方に不審さを感じた金融監督官のハン(チョ・ウジン)は、イルヒョンの裏に大物ブローカーであるボノピョの存在を感じ取る。
イルヒョンはハンに尻尾をつかませないよう立ち回るが、そんな中トレーダーのペクがビルから飛び降り自殺をする。ペクはボノピョが抱える違法トレーダーの一人であり、前日の夜にイルヒョンへ電話をかけていた。
ペクの不審な死を機に、イルヒョンはボノピョとの繋がりに疑問を抱き始めるのだが・・・
うだつが上がらない新人トレーダーのイルヒョンは、ボノピョの手引きで巨額の富を手にするようになると、生活が一変。高級マンションや最新家電、レアなスポーツグッズなどを次々と手に入れ、美女を連れて夜の街を遊び歩くようになる。一方で、慎ましく生活する親との関係を悪化させ、社会科の教師である恋人との関係も終わらせてしまう。
生活水準の上昇は決して悪いことではないが、急激な変化で周囲との軋轢を生み、家族も恋人も友人も失ったイルヒョンに経済的な豊かさとは裏腹に幸福には見えない。人生で求める幸せとは何かを考えさせられる。
金儲けの理由を「面白いから」と豪語するボノピョは、会長の死去により倒産目前となったウソン貿易の株を買い占め、中国への会社売却を目論む。
会長はイルヒョンの同僚であるチョン・ウソン(キム・ジェヨン)の父。株価操作のためボノピョが会長の死を仕掛けたと悟ったイルヒョンは、ボノピョを裏切り自らウソン貿易の株を購入。それをウソンに買い戻させ国外への売却を回避し、ボノピョの目論見を打ち砕いた。
株式市場においては、時に会社そのものが商品となり、巨額の金が動く。わずかな時間にウソン貿易という企業体の命運が左右されるスピード感と、ボノピョの裏をかこうとイルヒョンが仕掛ける心理戦は、経済ドラマならではのスリルあふれる名シーンを演出している。
テンポの良いストーリー展開で大ヒットも納得の116分。日本では2019年に上映された。
<作品データ>
原題:돈/ Money 邦題:金の亡者たち
2019年・韓国(1時間55分)