カネで闇落ちした人生を描く『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』

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『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』

違法な高金利の闇金屋・丑嶋馨を主人公とした『闇金ウシジマくん』シリーズの最終作。性悪説を貫き、金を返す相手しか信じないという丑嶋の前に現れたのは、まるで性善説の塊である中学の同級生・竹本優希。人の善意を信じ切る竹本が、丑嶋の信念に是非を問いかける。

本作品のあらすじ

「金は貸す。ただし、人生と引き換えだ。」を信条に10日で5割(通称トゴ)という違法金利で金を貸すサラ金「カウカウファイナンス」の社長・丑嶋馨(山田孝之)の前に、中学校の同級生である竹本優希(永山絢斗)が現れる。丑嶋に借金を断られた竹本は、食費もなく道端で座り込んでいたところをひとりの男に拾われる。

仕事を斡旋するといわれた竹本が連れてこられた場所は、鰐戸三兄弟によって運営される「誠愛の家(通称ラブハウス)」。そこは重労働の賃金をピンハネされる経済困窮者が集まる、貧困ビジネスの現場だった。

鰐戸三兄弟の三男・三蔵(間宮祥太朗)は中学時代に丑嶋にケンカで殺されかけており、今でも丑嶋を恨んでいた。竹本と丑嶋のつながりを知った三蔵は、竹本に丑嶋から金を借りさせ、馴染みの悪徳弁護士・都陰(八嶋智人)を使い踏み倒すという攻撃を始める。

それだけでは飽き足らない鰐戸三兄弟は、丑嶋が留守の間にカウカウファイナンスの事務所を襲撃。従業員の枝崎(やべきょうすけ)・高田(崎本大海)を誘拐し、丑嶋へ身代金を要求する。

一方、襲撃の合間に竹本が向かった先は、丑嶋が大切に飼っていたウサギの墓。目的はラブハウスの仲間と分け合うために、墓に隠されている金を盗難することだった。事務所を襲撃され、隠していた金を盗まれたと知った丑嶋は、鰐戸に指定された場所へ向かうが……

“筋を通す”ということ

5割といいながら10割の利息を求める丑嶋に対し、竹本は「強欲は罪だよ」と諭す。揺るがない正義感をもつかに見えた竹本だが、実際は丑嶋から借りた金を踏み倒し、鰐戸三兄弟たちが丑嶋の事務所を襲撃した隙に丑嶋の隠し金を盗んでいた。

一方で丑嶋は違法金利とはいえ、契約を守りさえすれば、どの債務者に対しても文句は言わない。それどころか継続した返済を維持させるため、体を張って債務者の生活を守りすらする。

丑嶋は契約に対して筋を通し、竹本は正義感を盾に人の害となる行動をとり続けた。結果として竹本は味方ができないまま破滅への道を進み、丑嶋は信頼できる仲間たちとの生活を取り戻していく。「どちらが正しい生き方か」とも言えないが、少なくとも丑嶋は筋を通した結果、信頼し合える人々と出会ったということなのだろう。

抜け出せない底辺生活 ブラック企業の構造

竹本と同じ「つくしの間」に所属する甲本に対し、給料日に87,000円が支給される。そこから家賃、交通費、食費といった名目で天引きされ、手元に残るのはわずか18,800円。仕事をするか寝るかしかないラブハウスの従業員にとって、給料日に解放されるパチンコやピンボールはこの上ない娯楽だ。彼らはわずかな給料でさえも吸い上げられ、社会復帰の可能性を失っていく。

果たしてこれは極端な描写なのか。実社会におけるブラック企業の労働環境は、ラブハウスの搾取構造と同じといえないか。長時間労働に対しわずかな給料が支給され、入った現金はストレス解消のために浪費する。逃げ場のないまま、使い物にならなくなるまで働かされる。貯金はなく、そこには未来も希望もない。

競い合うように遊戯台を取り囲み、なけなしの給料を浪費する従業員の姿には、悲哀を通り越したものがある。一度負のループに入ると、自らの力ではなかなか脱出できないという現実を知る。

原作は2004年から2019年までビックコミックスピリッツで連載されていた。映画で興味を持った方は、寝苦しい夜に全46巻を一気読みするのもいいかもしれない。

文:M&A Online編集部

<作品データ>
闇金ウシジマくん ザ・ファイナル
出演 山田孝之、綾野剛、永山絢斗
2016年・日本・130分

闇金ウシジマくん ザ・ファイナル