仕手戦を通じて投資の世界を学ぶ『作戦 THE SCAM』

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経済や金融の話題が苦手で難しい本は敬遠しがちでも、映画やテレビドラマなら気軽に楽しめるという人も多いはず。今回もエンターテインメントとしても楽しめる、おすすめの1本を紹介する。

韓国映画「作戦 THE SCAM」は、デイトレードの世界に身を投じた青年が裏社会に巻き込まれていく姿を描くマネードラマ。株取引を題材としており、劇中には「日足(ひあし)」「週足(しゅうあし)」「月足(つきあし)」といった相場の動きを表すチャートで使われる用語や、BPS(1株当たり純資産)といった金融用語が出てくるが、専門知識が無くても十分に楽しめる。 


あらすじ紹介 敵か味方か・・・

貧乏な人生からの一発逆転を目指した株取引で失敗し、返済できずにブラックリスト入りした青年カン・ヒョンス(パク・ヨンハ)。死に物狂いで再起を果たし、デイトレーダーとして生計を立てていた。

ある日、ヒョンスは目をつけていた銘柄の株取引に成功し、大きな利益を出す。しかしその株は投資会社を経営する元ヤクザで現在は投資会社CEOのファン・ジョング(パク・ヒスン)が仕掛けた仕手株*だった。

*ある投資家たちが特定の銘柄に対して売買を大量に行い、株価の高騰や暴落を意図的に相場操縦することを「仕手」といい、仕手の対象となりやすい株式を「仕手株」という。

ヒョンスの介入により仕手戦は失敗に終わってしまう。大損失を出した原因がヒョンスであることを突き止めたジョングは、ヒョンスを拉致するも、その能力を買い、次に仕掛ける大掛かりな仕手戦に加わるよう強引に勧誘する。

仕手戦の舞台となるテサン土建の大株主、裏金工作に走る政治家、資金源である投資家、ファンドマネージャー・・・それぞれが利益を独り占めしようと画策する中、作戦の中心にいるヒョンスも彼らの思惑に巻き込まれ、その身を危険にさらしていく。

リアリティのある韓国経済

本作が公開されたのが2009年。リーマンショック(2008年)の直後ということもあり、劇中で描かれる人々の生活は陰惨で、当時の韓国経済を色濃く反映している。

主人公のヒョンスは大卒でありながら無職、その弟もまた大卒ながら就職先がなく、倍率100倍を超える公務員採用試験のため勉強を続けている。ヒョンスに株のアドバイスを求める友人も、投資で収入を増やさざるを得ないコールセンターの契約社員も、登場人物がみな貧困に喘いでいる。

投資のことはよくわからないという方でも、投資会社や大手証券会社のトレーダー、”アリ”と呼ばれる個人投資家の存在など、どんな人たちがどのように関わっているのかストーリーを追うことでスムーズに理解できる。

カン・ヒョンスを演じるのは、「冬のソナタ」でペ・ヨンジュンとともに日本でも人気を博したパク・ヨンハ。残念ながら2010年に逝去し、本作が彼の遺作となってしまった。

韓国映画の王道ともいえるベタなストーリー展開ではあるが、投資の世界が垣間見え、一発逆転のお楽しみも。

文:M&A Online編集部

<作品データ>
原題:작전 / 邦題:作戦 THE SCAM
2009年・韓国(1時間59分)