経済や金融業界のリアルな姿を垣間見たいのなら、映画がおすすめ!
本を読むのが苦手な人でも映像なら分かりやすく、2時間程度なので手っ取り早い。実話をベースにした作品もあるので、世の中の経済事件を理解するのにも一役買ってくれる。
多少専門用語も出てくるものもあるが、映画をきっかけに勉強してみるのもおすすめだ。エンターテインメントとしても楽しめる、おすすめの1本を紹介する。
自由気ままな独身貴族が会社に代わりリストラを宣告する「解雇通知代理人」を、プライベートでも独身貴族だったジョージ・クルーニーが熱演。解雇される人々の悲痛な姿と、登場する女性たちの結婚模様を通じ、「人生に必要なものは何か」と問いかける。
企業の解雇通告代理人を務めるライアン・ビンガム(ジョージ・クルーニー)は、1年間のほとんどを飛行機の上か出張先で過ごしていた。彼の目標はアメリカン航空史上7人目の1000万マイル達成者。そんな飛行機に乗りアメリカ中を飛び回ることがアイデンディティとなっていた彼の前に現れたのは、テレビ電話を使うことで効率化を図ろうとする新人・ナタリー(アナ・ケンドリック)だった。
ナタリーが解雇の現場の人間について無理解であることを知らしめたライアンは、ナタリーを連れて出張に向かうことに。その旅先でライアンがもつ孤独な哲学に疑問を呈したナタリーだったが、出張先ではまるで戦力にならず、同時期に恋人に別れを告げられて落ち込んでしまう。
その頃、妹の結婚式に出席するため、旅先で出会ったアレックス(ヴェラ・ファーミガ)と故郷オハマに戻ったライアン。アレックスと共に思い出の母校を訪れ、また義理の弟となるジム(ダニー・マクブライド)のマリッジブルーに向き合うといった体験を重ねたライアンは、徐々に一人だけで生きていく自分の人生の哲学に疑問を持ち始めていた。
そして念願の1000万マイルに到達したライアンが、祝福の中で思うことは……。
家庭や子供に勝ちを見いだせないと言い切り、マイルを貯め続けることを生きがいとしているライアン。そんな彼が旅先で出会った美女・アレックスに心惹かれ、また妹の結婚に立ち会うことで誰かと共に歩む人生に価値を見出しかけた矢先、サプライズで向かったシカゴで、アレックスが家庭を持っていることを知る。
一人ではない人生の価値を知ってしまったライアンは、それまで精力的に行っていた、身軽な人生の素晴らしさを説く「バックパックの中身は?」のスピーチもできなくなってしまう。しかし自分の周りにはともに人生を歩める人物は残っておらず、ステータスを手に入れた彼が本当に欲しいものを何も手に入れられなかった姿は、観る者に人生の成功とは何かを考えさえる。
十数年勤め続けていた人々が、ものの5分の面談で仕事を奪われていく様は、アメリカの雇用環境の残酷さを見せつけられるとともに、明日は我が身という危機感を駆り立てられる。多くの人々のクビを切ってきたライアンが、テレビ電話での解雇通告システムにより仕事を奪われかけるのもなんとも皮肉な話だ。
原題の「Up in the Air」は「未定」という意味で、主導権がなく誰かの決定を待っている状態のこと。ライアンが人生の主導権を取り戻すことはできるのだろうか。
<作品データ>
原題:Up in the Air/邦題:マイレージ、マイライフ
2009年・アメリカ(1時間49分)