経済や金融業界のリアルな姿を垣間見たいのなら、映画がおすすめ! 特に本を読むのが苦手な人や異業種で働く人には、映像で見るのは分かりやすく、2時間程度なので手っ取り早い。実話をベースにした作品もあるので、世の中の経済事件を理解するのにも一役買ってくれる。多少専門用語も出てくるものもあるが、映画をきっかけに勉強してみるのもおすすめだ。エンターテインメントとしても楽しめる、おすすめの1本を紹介する。
高杉良の小説「金融腐蝕列島」シリーズの2作目を役所広司主演で映画化。1997年に発覚した第一勧業銀行総会屋利益供与事件をモデルに、腐敗したメガバンクを再生すべく立ち上がった中堅行員らの奮闘を描く。タイトルの「呪縛」は、当時第一勧業銀行の頭取であった近藤克彦氏が記者会見で不祥事の原因について「呪縛が解けなかった」と発言したことからきている。
1997年、朝日中央銀行(ACB)による総会屋への利益供与が発覚。ACB本店は東京地検特捜部からの強制捜査を受けることとなり、上層部を含めACBはパニックに陥る。そんな中、責任逃れを模索するだけの上層部に危機感を感じた企画部の北野浩(役所広司)らミドル四人組が、旧態依然とした金融業界の悪習を断ち切るべく、ACB再建に乗り出す。
1997年は、映画のモデルとなった第一勧業銀行だけでなく、野村證券や山一證券などの旧四大証券による総会屋への利益供与が明るみとなった波乱の年。総会屋への多額の損失補填や不正融資で逮捕される幹部が続出した。
その捜査を進める中で、銀行や証券会社と大蔵省との癒着も発覚。いわゆる「ノーパンしゃぶしゃぶ事件」としても知られる大蔵省の汚職事件だ。映画では、椎名桔平演じる片山がACBのMOF担として、大蔵省官僚に接待する様子が描かれている。
MOF担とは大蔵省(Ministry of Finance)との折衝担当者のことで、大蔵省に出入りし、根回しをしたりさまざまな情報を引き出したりするのが仕事だ。こうした大蔵省の歪みが表面化したことも一因となり、大蔵省解体へとつながっていった。
1982年の商法改正で企業による株主への利益供与が禁止されたとはいえ、当時はまだまだ総会屋の活動は活発だった。
北野らミドル四人組を中心に組成された真相調査委員会のメンバーたちが、株主総会前に総会屋対策のリハーサルと称してヤジを飛ばしあうシーンを見るに、それほど株主総会における総会屋の存在感は大きなものだったことがうかがえる。
緊張感あふれる株主総会のシーンは必見だ。ピーク時には1000人以上いた総会屋も、法改正やコンプライアンス意識が高まる中、今ではほとんどが姿を消した。
文:M&A Online編集部