経済や金融業界のリアルな姿を垣間見たいのなら、映画がおすすめ! 特に本を読むのが苦手な人や異業種で働く人には、映像で見るのは分かりやすく、長くても2時間程度なので手っ取り早い。多少専門用語も出てくるものもあるが、映画をきっかけに勉強してみるのもおすすめだ。今回はいつもとは趣向を変え、ドキュメンタリー映画の中から、おすすめの1本を紹介する。
仮想通貨「ビットコイン」を知るためにうってつけの入門編。ビットコイン起業家や投資家らが登場し、ビットコインの基本的な仕組みをはじめ、ビットコインがどのようにして誕生したのか、そして今後どのように世界経済を変えていくのかなどを、わかりやすく解説してくれる。
現在一般的に普及している銀行やクレジットカードなどの支払いシステムは、基本的には第三者が介入して私たちの代わりに取引を行っている。つまり、各個人の台帳は、銀行やクレジットカード会社などの中央機関が管理している。そうした取引を個人で直接行えるようにしたのがビットコインだ。台帳は分散型の公開台帳となっており、ビットコインを使って取引をする全員で管理する。映画では、このビットコインの肝ともいえる構造をシンプルにわかりやすく説明している。
ただし、この分散型台帳を成立させるブロックチェーン技術についてはほとんど説明されていないので、その理論をしっかり理解したいという人には物足りないかもしれない。
キプロスの例のように、もし銀行が破綻してベイルイン(Bail-in)を実施することになれば、私たちの預金は実質私たちのものではなく、銀行のものになってしまう。その観点からすれば、ビットコインは自身の資産を自ら守る手段の一つといえる。一方で、盗難などがあった際も全て自己責任であることも忘れてはならない。
ビットコインの生みの親とされるSatoshi Nakamoto。個人なのかグループなのか、その正体は謎に包まれたままだ。Satoshi Nakamotoを巡ってはさまざまな憶測が飛び交っているが、それを知ることに意味はないと語る貨幣学者のトレース・メイヤー。「私たちは誰が作ったのか知らないものを数多く使って、日々の生活で恩恵を受けている」という彼の言葉は何とも印象的だ。
製作に日本の企業が参加していることから、日本におけるビットコイン事情の一端が垣間見られる。日本は仮想通貨後進国だといわれているが、それでも少しずつビットコインが美容院や飲食店などで導入され始めている実例を紹介。ビットコインはクレジットカードと違ってほとんど手数料がかからない(かかっても1%程度)ため、店側としてはコストを削減することができるという。他にも、入金までのサイクルがクレジットカードより早いということもビットコインのメリットとして挙げられる。現在、日本でビットコインが導入されている店舗は4500店舗ほどとのことだが、海外では日本よりもビットコインが普及しているため、訪日外国人を見込んで2020年の東京五輪に向けてますます増えていくことが予想される。
文:M&A Online編集部