「プリティ・ウーマン」(1990年)|一度は見ておきたい経済・金融映画&ドラマ<9>

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経済や金融業界のリアルな姿を垣間見たいのなら、映画がおすすめ! 特に本を読むのが苦手な人や異業種で働く人には、映像で見るのは分かりやすく、2時間程度なので手っ取り早い。実話をベースにした作品もあるので、世の中の経済事件を理解するのにも一役買ってくれる。多少専門用語も出てくるものもあるが、映画をきっかけに勉強してみるのもおすすめだ。エンターテインメントとしても楽しめる、おすすめの1本を紹介する。

「プリティ・ウーマン」(1990年)

プリティ・ウーマン

ゲイリー・マーシャル監督、リチャード・ギア、ジュリア・ロバーツ主演の現代版シンデレラストーリーの元祖ともいうべきロマンティック・コメディ。本作で、ジュリア・ロバーツは一躍ハリウッドスターとなった。当初の脚本では、タイトルは「$3000」(ヴィヴィアンの契約金)と何とも味気ないもので、結末もハッピーエンドではなかったそうだ。

【あらすじ】

企業買収を得意とする実業家のエドワード(リチャード・ギア)は、LA・ビバリーヒルズで道を尋ねたことから、娼婦のヴィヴィアン(ジュリア・ロバーツ)と出会う。何かしらヴィヴィアンに惹かれたエドワードは、彼女を1週間だけのパートナーとして3000ドルで雇うことに。はじめは割り切った関係のはずだったが、次第にお互い惹かれ合い……。

【見どころ】

LBOによる企業買収は盗難車のパーツ売り!?

ヴィヴィアンと一夜を共にした翌朝、自身の職業について問われたエドワードは、企業買収が仕事で、ある企業(造船業を営むモース社)を10憶ドルで買おうとしていると明かす。「10憶ドルなんて持ってないくせに」とヴィヴィアンに言われ、「銀行や投資家の融資だ。買収も楽じゃない」と返すエドワード。ここで、エドワードがLBO(レバレッジド・バイアウト)でモース社の買収を仕掛けているということがわかる。LBOを使ったM&Aが盛んに行われていた1980年代のアメリカを彷彿とさせる一コマだ。「(買った後に)会社を売るだけ?」というヴィヴィアンに、エドワードは「会社を解体してバラバラに処分する。儲けが大きい」と話す。それに対してヴィヴィアンが「車を盗んでパーツを売るのと同じね」と返すのには、妙に説得力がある。

敵対的買収と売春の共通点

モース社を買収して切り売りしようというエドワードと、自身の身体を売る売春婦のヴィヴィアン。両者に共通するのは、「金のためなら割り切れる」という仕事への姿勢だった。そんなある意味似たもの同士であった二人。仕事に私情は挟まないと言い切って始まった二人のビジネス契約だが、エドワードとヴィヴィアンの関係性が変わっていくにつれ、買収交渉の様相にも変化が見えてくる。最終的には、敵対的買収から提携という真逆の形に変わるのは、M&Aが人を介して行われているからこその結果なのではないだろうか。

文:M&A Online編集部