経済や金融業界のリアルな姿を垣間見たいのなら、映画がおすすめ! 特に本を読むのが苦手な人や異業種で働く人には、映像で見るのは分かりやすく、2時間程度なので手っ取り早い。実話をベースにした作品もあるので、世の中の経済事件を理解するのにも一役買ってくれる。多少専門用語も出てくるものもあるが、映画をきっかけに勉強してみるのもおすすめだ。エンターテインメントとしても楽しめる、おすすめの1本を紹介する。
生放送中の投資情報番組が乗っ取られ、司会者を人質に立てこもるというサスペンス。ジョディ・フォスターがメガホンをとり、ジョージ・クルーニーにジュリア・ロバーツというハリウッドスターの共演と、豪華な顔ぶれが話題となった。
投資情報番組「マネーモンスター」は、司会を務めるリー・ゲイツ(ジョージ・クルーニー)の軽快なトークとパフォーマンス、財テク情報で人気の番組。その生放送中、番組の投資情報で全財産を失ったという男がスタジオに入り込み、リーを人質に番組をジャックする。男は株の意図的な情報操作があったと主張。リーを救うべく、番組ディレクターのパティ(ジュリア・ロバーツ)は真相解明に乗り出す。
映画冒頭、ジョージ・クルーニー演じるリーが株価情報をネタに楽しそうに歌い踊るシーンは多少の悪ノリ感は否めないが、なんともアメリカらしい演出だ。リーと番組ディレクターのパティ(ジュリア・ロバーツ)の阿吽の呼吸で、さまざまな効果音や映像がタイミングよく飛び出てくるのも視聴者をある意味飽きさせない。
日本ではあまり考えられないような投資情報番組だが、似たような番組はアメリカには実在する。投資家のジム・クレイマーがホストを務めるCNBCの「Mad Money」だ。劇中の「Money Monster」もこの番組をモデルにしたのではないかという意見があるが、監督のジョディ・フォスターは否定している。ちなみに「Mad Money」は、映画「アイアンマン」にも登場するほど、アメリカではメジャーな番組のようだ。
どちらかというと、金融的側面はそこまで前面に押し出されていないが、この映画のキーワードともなるのがアルゴリズム取引の一つ「HFT(高頻度取引)」だ。「超高速取引」などとも呼ばれる。
番組をジャックした犯人は、リーの「銀行よりも安全」という言葉を信じ、アイビス社の株を購入。ところが数日後にアイビス社の株価は大暴落し、8億円もの巨額損失を計上してしまう。アイビス社はこの巨額損失についてHFTのアルゴリズムのバグが原因と説明するだけ。確かな原因が不明なまま、投資家たちは煙に巻かれることになるが、犯人は巨額損失の裏には何かしらの情報操作があったと主張する。
HFTとは、1秒にも満たないミリ秒単位でコンピューターのプログラムが株取引を自動で行うもので、アメリカでは取引所での取引の半分以上を占める。日本でも東京証券取引所が2010年から株式売買システム「arrowhead(アローヘッド)」を導入したことにより、HFTの取引は盛んになっている。高速で大量の取引がなされることで市場の流動性を確保できるといわれているが、一方で高い処理能力のコンピューターシステムが必要であり、不公平性などの問題も。2010年にダウ平均株価が5分で1000ドルほど急落した「フラッシュ・クラッシュ」を引き起こした一因でもあるともいわれている。
文:M&A Online編集部