有料会員数が世界で2億人を超え、現在最も人気のあるストリーミングサービスといっても過言ではない「Netflix(ネットフリックス)」。海外コンテンツはもちろんのこと、特に最近評判なのが、オリジナル作品のクオリティ(の高さ)。
今回は、Netflixでしか視聴できない、過去に賞レースで話題となったオリジナル3作品をご紹介します。
Netflixオリジナル作品の中でも転換期となった一本。監督は2013年の『ゼロ・グラビティ』で第86回アカデミー賞・監督賞を受賞したメキシコ国籍のアルフォンソ・キュアロン。次作として企画した『ROMA/ローマ』ですが、メキシコを舞台にした非英語・モノクロ映画ということで、ハリウッドメジャーは商業的な成功を見いだせず、企画はボツに。そんな中で、Netflixがオリジナル作品として製作することを発表します。
その結果、本作品は2018年の第75回ヴェネチア国際映画祭で最高賞の金獅子賞を受賞。その後も、2019年の第76回ゴールデングローブ賞、第91回アカデミー賞の中心作品となり、アルフォンソ・キュアロンは2度目となるアカデミー賞・監督賞を受賞しました。
まさに、Netflixが賞レースへ参戦するきっかけとなった作品といえるでしょう。
スカーレット・ヨハンソンとアダム・ドライバーの人気俳優が離婚を決意した夫婦を演じた作品。21世紀版の『クレイマー、クレイマー』とも言うべきストーリーで、高い評価を受けました。
主演の二人以外にもローラ・ダーンやレイ・リオッタ、アラン・アルダなどそうそうたるベテラン俳優が顔を揃え、本作品に厚みが増しました。
2020年の第92回アカデミー賞では主演の二人に加え、作品賞や助演女優賞などの6部門にノミネート。『パラサイト 半地下の家族』や同じNetflixオリジナル作品の『アイリッシュマン』などと賞を争いました。そして本作品では離婚弁護士を演じたローラ・ダーンがキャシー・ベイツ、スカーレット・ヨハンソン(別作品でノミネート)、フローレンス・ピュー、マーゴト・ロビーらを抑え、助演女優賞を受賞しました。
『セブン』や『ソーシャル・ネットワーク』で知られるデヴィッド・フィンチャー監督は、早い時期からNetflixとタッグを組んでいた監督の一人です。2013年からNetflixの政治ドラマ『ハウス・オブ・カード野望の階段』をプロデュースしてきました。そんな彼が2020年にNetflixで発表したのが『Mank/マンク』です。
映画史に残る名作として知られるオーソン・ウェルズ監督の『市民ケーン』(1941年)。共同脚本家であるハーマン・J・マンキーウィッツ(=マンク)の視点で『市民ケーン』の舞台裏を描きました。
当初はモノクロ映像に不安を感じていたフィンチャー監督でしたが、Netflix側から『ROMA/ローマ』の前例があること知らされ、決断したそうです。結果的に2021年の第93回アカデミー賞では最多となる10部門ノミネートされ、撮影賞と美術賞を受賞しています。
今回はご紹介しませんでしたが、上記の他に賞レースを賑わした作品として、ベトナム反戦デモの裁判を題材にした『シカゴ7裁判』や、43歳で急逝したチャドウィック・ボーズマンの遺作『マ・レイニーのブラックボトム』もおススメです。
文:村松 健太郎(映像文筆家)/M&A Online編集部