三菱自が本格参入、佐川は大量輸入…軽自動車にEV時代が来る!

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三菱自動車<7211>が2024年3月期に、軽商用電気自動車(EV)を200万円未満で販売する。日本経済新聞が伝えた。2021年3月に生産中止した「ミニキャブ・ミーブ」をリニューアルし、車両価格を約2割ほど引き下げて販売する。これだけのコスト削減になると量産化が前提で、軽EV市場への「本格参入」にチャレンジする。

実現が難しいと見られていた軽EVだが…

佐川急便もEVベンチャーのASF(東京都港区)が開発し、中国・広西汽車集団傘下にある柳州五菱汽車が生産した軽商用EV 7200台を2022年9月に導入する。普通車仕様のEVよりも実現が難しいとされてきた軽EVだが、一気に普及のフェーズに入りつつある。

佐川急便が大量導入するASF開発のEV商用車(ASFホームページより)

「日本の国民車である軽自動車はEV化が難しい」と豊田章男日本自動車工業会(自工会)会長が警鐘を鳴らしたのは2020年12月。それからわずか半年後に事態は急変した。なぜ、ここにきて軽EVが普及に向けて前進したのか?

一つは中国での小型EVブームである。かつて中国のEV市場は本格的な普通車EVと、日本では原動機付自転車に当たる格安のミニカーEVに二極分化していた。しかし、所得水準の向上とともに、その中間を埋める軽自動車とほぼ同クラスの小型EVが登場する。

代表的なEVが、2020年7月に発売された中国・上汽通用五菱の「宏光MINI EV」。ゴルフカートのような格安EVとは一線を画し、自動車と同様のボディーと内装を備えている。最安モデルが49万4300円(2万8800人民元)からと安く、2021年1月には3万6762台を販売してテスラの「モデル3」を追い抜いて「世界で最も売れているEV」となった。

商用車であれば日本でも低価格EVは普及する

低価格を実現した理由は、EVで最も高いバッテリーのコストダウン。「宏光MINI EV」のバッテリー容量は9.2kWh(航続距離120km)と13.8kWh(同170km)、日産自動車「リーフ」の40kWh(同322km)と62kWh(同458km)に比べると、はるかに小容量だ。最高速度も時速100kmに抑えており、一般道路での短距離移動に適した性能となっている。

中国・上汽通用五菱の低価格小型EV「宏光MINI EV」(同社ホームページより)

日本の軽商用車も一般道路での短距離移動が中心になるため、バッテリーは小容量で済む。三菱自が200万円未満で発売する次期「ミニキャブ・ミーブ」の電池容量は現行モデルの16.0kWhと同程度ながら、技術革新と生産増でバッテリー価格が下がっているため、約2割の値引きが可能になるという。航続距離は約150kmと現行モデルと変わらない。

それでもガソリンエンジン仕様の軽商用車よりは割高だが、行政の補助金に加えて、次世代自動車振興センターによるとEVの燃料コストは1km当たり3.8円と、同6.9円のガソリンエンジンよりもかなり安い。

「ミニキャブ」のガソリンエンジン仕様最高グレード車(159万6100円)との比較では、充電に再生可能エネルギーを利用すれば国と自治体(東京都)から最高74万円の補助金を得られ、200万円を切るEVの方が割安になる。

最低グレード車(98万6700円)との比較でもEVの燃料コストが1km当たり3.1円安いため、9万1000km以上走行すれば元が取れる計算だ。商用車なら10万km以上は走るだろうから、総コストは割安となり導入が進む可能性は十分にある。

150kmの航続距離も、近距離の配送や移動が中心の軽商用車ならば問題はない。さらに稼働時間も深夜が中心の長距離輸送に利用される大型トラックと違い、日中がほとんど。そのため電力料金が安い深夜帯に充電できるのも都合が良い。

自家用車で10万km走行して乗り潰すケースはまれだが、商用車に比べると上級グレード車を選ぶケースが多いので、低価格EVならば補助金で価格差は縮小する。何よりも軽自動車の比率が高い過疎地ではガソリンスタンドの閉店が相次いでおり、EVの方が使い勝手が良くなりつつある。低価格EVが乗用車にも拡大すれば、軽需要が旺盛な地方を中心に普及が進みそうだ。

文:M&A Online編集部