マイクロソフトの「M&Aショック」でソニーグループ株が下落

alt

米マイクロソフトのM&Aが、ソニーグループ<6758>の株価を下落させた。マイクロソフトが18日に米ゲームソフト会社のアクティビジョン・ブリザードを687億ドル(約7兆8700億円)で買収すると発表したのを受けて、19日のソニーグループ株が終値で前日比12.79%安の1万2410円と、大幅に下げた。

単なる人気ゲームの「囲い込み」なのか?

ゲーム機のライバルであるマイクロソフトが有力ゲーム開発会社を買収したことがソニーとの競争で有利に働くとの予想に加え、買収されたアクティビジョンの子会社である米インフィニティ・ウォードが開発した人「コール オブ デューティー(Call of Duty)」などの人気ソフトをソニーのプレイステーション(PS)向けに提供しなくなるのではないかとの憶測も影響した。人気ソフトを失うPSが、苦境に陥るとの見立てだ。

もっともアクティビジョンがPS向けにゲームを供給しなくなっても、ソニー側の損害は営業利益で100億〜300億円程度に留まるとの見方もある。一方、アクティビジョンもPSという強力なプラットフォームを失うことになり、それ以上の痛手を受ける。マイクロソフトがPSを追い落とすために、アクティビジョンのソフトを囲い込む可能性は小さい。

マイクロソフトが狙っているのは既存市場の死守ではなく、新たな成長市場の開拓と主導権だろう。例えばeスポーツ。「コール オブ デューティー」は戦場を舞台にしたシューティング(射撃)ゲームだが、チームプレーも可能で、賞金総額100万ドル(約1億1400万円)を争う団体戦の世界大会も開催されている。

日本代表チームも国際大会で活躍している(同社ホームページより)

ゲームで新たな成長市場の主導権を握ることも可能だ

シューティングゲームは格闘ゲームと並んで人気があるカテゴリーで、有力なコンテンツによるeスポーツ展開に成功すれば新市場での存在感が高まる。

メタバース(3次元仮想空間でのサービス)での展開を狙っている可能性もある。メタバースの原型となるサービスは2003年に開設された米リンデン・ラボの「セカンドライフ」が有名だが、SNSに似たサービスだったため、話題にはなったものの利用者が減少。2020年7月に同社は投資グループに売却された。メタバースのプラットホームがゲームであれば、固定客も存在し間口も広い。

「コール オブ デューティー」は1人の兵士視線で戦場を駆け回るゲームで、メタバースとの親和性が高い。コンシューマーゲーム機向けでありながら、リアリティーのある風景や戦闘シーンを60fpsという比較的高フレームレートで軽快に動かしている。この技術を応用すればスマートフォンなどの携帯端末でも、高度なメタバースのサービスを提供できるだろう。

eスポーツやメタバースといった新たな成長市場への進出に成功すれば、マイクロソフトがアクティビジョンのM&Aに8兆円近くを投じたとしても「お釣りがくる」に違いない。

文:M&A Online編集部