人事コンサルタントミッキー先生による新連載が始まります。もし、中小企業に勤務するあなたの勤務先が大手企業に買収されたらどう思いますか?
中小企業が急速に事業規模を拡大したり、大手企業に買収されたりすると(本稿では仮に「社格があがる」と表現することにする)、製品、サービス、社員のレベルに対する取引先や社会からの見る目、期待値が一気に厳しいものになる。
中でも、社員のレベルアップは、製品やサービスの品質を左右する上、企業ブランドの一つとして従来以上に重要な要素になっている。社員の対応が不適切だったりコンプライアンス違反を犯したりすると経営陣や広報部がマスメディアで謝罪をしなければならない時代だ。社員の方も、上司に叱られるだけではすまない。何らかの懲戒をうけることになる。
本稿では社員のレベルをあげる必要に迫られた中小企業が一般的にどのような対策を行うのか、それについて社員としてのあなたは何をする必要があるのだろうか。
企業としての社格があがると、社員も並行してレベルアップしなければならない。それも急速にである。社員であるあなたは社格に応じた新しい知識やスキルを求められる。しかし仮にあなたがそうすることができなければ、早晩、会社は外部からあなたがもっていない経験やスキルをもった人を採用し、あなたの部署に配置するか、あなたの上司に据えるだろう。場合によっては、あなたは、やっかいものになる。
これを乗り切るには2つの方法がある。ひとつは、中途採用者や、M&Aにより新しく経営陣になった外部の人間が簡単には理解・習得できない自社独自の特殊な情報やノウハウを身に付けること。つまり余人をもって代えがたい人になることだ。ただそれは当面の安心にはなるが生涯安泰とはいえないので、注意が必要だ。
もう一つは、新しいスキルを身に付けることだ。その場合、会社が教育訓練をしてくれると期待するのは甘い。第一、教育研修を数回受けただけで、スキルが身につくわけがない。教育機関を利用するなどの自助努力が必要だ。
また社格があがると、会社は雇用環境の見直しに着手する。社会から注目される存在になるので、ブラックな雇用慣行は早急に改める必要がでてくる。また上に述べたように採用力を強化するための人事制度の改定を行うだろう。給与水準や職位階層が見直され、教育研修も充実していく。これは社員にとってはプラスの側面だ。もしあなたの会社が買収された方だったら、買収した側に合わされることになる。
もっともその場合、中小企業だったときよりも厳しい競争とその結果としての処遇になることもなくはない。ただ、キャリア展望が開けるチャンスは増える。買収した側は組織の融合のために、被買収側から優秀な社員を選び出して、買収側で育成、活用しようと考えるからだ。もし新しい挑戦の機会が与えられるなら、積極的に手をあげて新天地を開拓していくことも可能だ。
文:人事コンサルタント ミッキー/編集:M&A Online編集部