第2次補正予算案を閣議決定 5800億円を成長分野への転換に

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政府は11月8日、新たな総合経済対策の財源となる2022年度第2次補正予算案を閣議決定した。一般会計の歳出総額28兆9,222億円のうち、中小企業・小規模事業者等関連には1兆1,190億円を配分。およそ半分の5,800億円を事業再構築補助金の拡充に投入し、成長分野への転換などを強力に促す。

「産業構造転換枠」など新設へ

事業再構築補助金をめぐっては、成長分野への転換を図る事業者(成長枠)の売上減少要件を撤廃。市場規模が縮小する業種・業態からの転換には「産業構造転換枠」を新設し、廃業費用がある場合は補助上限額を2,000万円引き上げる。中小・中堅企業から中堅・大企業となった場合は補助上限額が2倍になる「卒業促進枠」も新たに用意する。

また、円安を生かした国内回帰を図る事業者向けに上限5億円の「サプライチェーン強靭化枠」(補助率2分の1)を新設。新型コロナウイルスや物価高騰などの影響で業況が厳しい事業者には、引き続き高い補助率で支援を継続する。

さらに、事業再構築補助金と、事業承継・引継ぎ補助金など生産性革命推進事業4補助金について、賃上げを条件とした補助内容を抜本的に拡充する。生産性革命推進事業には2,000億円(国庫債務負担を含めると総額4,000億円)を充てる。

後継者の取り組みも補助対象に

このうち、事業承継・引継ぎ補助金の経営革新事業では、事業終了時に事業場内最低賃金が地域別最低賃金プラス30円以上などであれば、600万円の補助上限額を800万円に引き上げる(補助率は2分の1から3分の2)。現経営者だけではなく、後継者による取り組みも補助対象に含めることで事業承継の早期化・円滑化を推進する。

事業再生・承継の相談体制強化にも乗り出す。各都道府県にある中小企業活性化協議会と事業承継・引継ぎ支援センターの体制拡充に投じる67億円は、経済産業省が2023年度予算概算要求で前年度当初予算額に上乗せした額(67億3,000万円)に匹敵する。

このほか、創業時の壁となる経営者保証を不要とする信用保証制度を創設し、事業者が債務不履行となった場合に発生する信用保証協会の損失の一部などを補てんする。保証上限額は3,500万円を見込んでおり、具体的な制度設計は年内をめどに取りまとめる予定。

スタートアップ起業加速にも1兆円

岸田文雄首相が掲げる「新しい資本主義」の加速には5兆4,956億円を計上し、柱の1つとなるスタートアップの起業促進に1兆円程度を計上。イノベーションの創出に重点を置くSBIR制度(旧中小企業技術革新制度)の拡充(2,060億円)などを図り、政府が年内に策定する「スタートアップ育成5か年計画」に具体的な施策を盛り込む方針だ。

〈解説〉今こそ問われるM&A支援機関の意義

政府の総合経済対策の裏付けとなる2022年度第2次補正予算案で拡充された事業再構築補助金は菅義偉前首相の肝いりで始まり、事業承継・引継ぎ補助金をはじめとする生産性革命推進事業は安倍晋三元首相が掲げた経済政策だった。

歴代首相と同様、岸田文雄首相も独自の経済政策を展開しようとするのは当然で、その端緒はスタートアップ起業の促進などを掲げた「新しい資本主義」に表れている。

経済産業省は8月末に提出した2023年度当初予算概算要求に事業再構築補助金と生産性革命推進事業の継続を盛り込んだ。ただ、財政均衡も重視する岸田首相に配慮したのか、経営者の高齢化で廃業増が懸念される2025年問題が迫る事業承継・引継ぎ支援事業の要求額は前年度当初予算額(16億3,000万円)とほぼ同水準の20億円にとどまった。

経済政策の軸足はスタートアップに移行か

総合経済対策では新型コロナウイルスの影響の長期化と喫緊の課題である物価高騰に対応するため、一からの制度設計を省ける現行の補助金を拡充するのが手っ取り早かったのは確かだろう。しかし、2023年度当初予算の経済対策の軸足は、これまでの中小企業対策から「スタートアップ育成5か年計画」の施策に移る可能性もある。

中小企業庁は2021年度から、既存の中小企業が安心してM&Aに取り組める基盤づくりとしてM&A支援機関の登録を公募。申請が殺到したのは、自社(者)のサービスが事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)の対象になるメリットがあるからに他ならないが、支援機関がゆうに2,000社(者)を超えても補助金の採択率は50%前後のままで推移している。

政府の起業促進策をにらんだ事業承継の型が求められる

M&A支援機関が事業承継のさらなる円滑化に資するためには「スタートアップ育成5か年計画」で予想される手厚い施策の活用も念頭に置き、業種・業態転換などにとどまらないベンチャー型事業承継などを発掘・構築する手腕も欠かせない。持続的な成長を見据えた事業承継を望む事業者には、各支援機関のポテンシャルを見極める眼力が求められそうだ。

文:M&A Online編集部

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