中小M&A推進計画 、今年度は企業価値評価ツールに着手

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経済産業省・中小企業庁(東京・霞が関)

中小M&A推進計画、初のフォローアップを実施

中小企業庁は6月21日、中小企業の経営資源集約化等に関する検討会(座長・山本昌弘明治大学教授)を開き、2021年4月に策定された「中小M&A推進計画」のフォローアップを行った。計画の主な取り組み状況を確認したほか、M&Aプラットフォーム事業会社などの代表者らによるオブザーバーから意見を聴取した。

中小M&A推進計画は、新型コロナウイルスの影響で休廃業・解散が急増したのを受けて策定。経営資源の散逸回避と、事業再構築を含む生産性の向上を目指す。2025年度までの5カ年で官民一体の取り組みを進める中、年1回程度の定期的なフォローアップで新たな課題の把握に努め、必要があれば計画を修正・改訂することにしている。

今年度はAI導入を検討 企業価値評価の実証分析などに着手

計画策定から1年余りを経た初のフォローアップでは、中小M&A推進計画に盛り込まれた取り組みの進捗状況が報告された。これによると、国の事業承継・引継ぎ支援センターなどによる中小M&Aの件数は右肩上がりで推移。2022年度はセンターのデータベースを生かしたマッチング機会をさらに創出するため、AI導入の検討などを進めて必要なシステム改修にも乗り出す。

また、M&Aを実施する際に役立つ簡易な企業価値評価ツールの提供に向け、M&A取引の成約価格の調査や過去の取引実績に基づく企業価値評価の実証分析を行う。国が2021年度に創設したM&A支援機関登録制度の実績報告を活用し、中小M&Aに関する取引実態も明らかにする。

M&A支援機関の質向上を求める声も

オブザーバーからは「M&Aのイメージは過去に比べて改善している」「コロナ禍においてもM&Aが順調に推移しているのは、事業承継がますます必要になっているから」といった前向きの意見が相次いだ。「良質なパートナー(譲受事業者)・アドバイザーを求める中小企業オーナーのニーズは多数存在する」との展望も示された。

一方、最近の新たな課題としては、2,823件ものM&A支援機関が登録された制度について「十分なM&A支援能力を備えていない事業者も相当数含まれていると考えられる」との指摘があった。登録事業者の質や市場の健全性を確保するため、「M&A業界全体を底上げする教育・知識習得の仕組みづくりが課題」といった意見も寄せられた。

PMIを意識したデューデリジェンス浸透も課題

このほか、譲受側との利益相反について譲渡側の懸念などを解消する説明資料のひな型作成、企業健康診断や経済産業省が作成・提供するローカルベンチマークの活用などを加えた支援ツールの開発・整備を求める声が上がった。

M&A後の統合プロセスであるPMIを意識した過不足のないデューデリジェンス(DD)や企業価値評価を浸透させる上では、既存の「中小PMIガイドライン」を補足する新たなガイドラインの策定を望む意見も聞かれた。

文:M&A Online編集部

参考資料:中小企業の経営資源集約化等に関する検討会(第7回)配布資料|中小企業庁