中小企業庁は6月30日、中小企業政策審議会基本問題小委員会の下部に「制度設計ワーキンググループ(WG)」(座長・沼上幹一橋大学副学長)を設置した。新型コロナウイルスの克服後、日本経済を再び成長軌道に乗せるため、国内企業数の99%を占める中小企業の資本増強やM&Aを通じた成長に向け、その阻害要因となる制度を見直す。
中小企業庁によると、新型コロナ感染拡大後は国内全地域・産業の中小企業の景況感が悪化している。とりわけ製造業とサービス業の打撃が大きく、事業者の間では売上高や資金繰りの先行きを悲観する見方も根強い。
2020年2月以降の新型コロナ関連倒産件数は285件(6月26日時点、東京商工リサーチ調べ)に上り、これに伴う休廃業や解散件数の増加が懸念されている。
こうした中、アフターコロナにおける中小企業の業績回復を図る上では、労働生産性と利益率を底上げする必要があると判断した。
国内では、情報通信業と製造業は企業規模が大きくなるほど労働生産性が高まる半面、企業年齢が古いほど総資産利益率(ROA)は低下する傾向が見られる。
こうした状況の改善に向け、M&Aなどによる規模拡大や新陳代謝の促進が効果的と位置付けた。
制度設計WGでは、中小企業政策の新たなKPI(重要業績評価指標)の設定、中小企業支援の射程、スケールアップなどによる成長を後押しする方策、地域コミュニティの持続性の確保ー4項目を検討課題とする。
新たなKPI案では、中堅企業に成長した中小企業数を現在の年300社程度から年400社以上に増やすといった目標を提案。M&Aなどによるスケールアップの課題としては、中小企業にとどまった方が政府の支援策が手厚いといったメリットもあることから、中堅企業になっても最大5年間、中小企業支援を継続する仕組みづくりの必要性を挙げた。
また、規模拡大や将来的な上場を見据え、組織管理体制の構築・運用の強化、中小企業から中堅企業にかけた継ぎ目のない新規事業開発促進の重要性も強調している。
制度設計WGは10月下旬まで、計7回の会合を予定している。
文:M&A Online編集部