事業承継・引継ぎ支援センター、全国4分の1が「最低」評価に

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11カ所が最低の「C」評価に

実績不足で最低段階の評価に終わったセンターが4分の1に

2021年度の事業評価報告書で判定

中小企業庁は10月28日、中小企業基盤整備機構(中小機構)が9月に提出した2021年度事業承継・引継ぎ支援事業に関する事業評価報告書を公表した。47都道府県(48カ所)にある事業承継・引継ぎ支援センター全体の活動実績は前年度を上回った半面、実績不足で最低段階の評価に終わったセンターが4分の1に上った。

事業承継・引継ぎ支援センターは2021年度、旧事業承継ネットワーク事業を統合して改称。第三者承継(M&A)の譲渡相談と成約支援の既存事業に、プッシュ型の事業承継診断支援、親族内承継の相談と支援、事業承継時の経営者保証解除支援の各事業が加わった。

M&A成約の目標達成率は75.7%

新型コロナウイルスの影響で企業経営が厳しさを増した2021年度はM&Aの成約件数が過去最多の1,514件に達したが、目標2,000件の達成率は75.7%だった。同じく最多となった譲渡相談件数(6,706件)の達成率は111.8%を記録したものの、経営者保証解除支援の申請件数(2,647件)は目標5,000件の52.9%にとどまった。

「A」評価9カ所も、11カ所が「C」

また、各センターの実績をABCの3段階に区分した事業評価(2021年度に新規事業の一部を実施しなかった東京都、東京都多摩地域、鹿児島県の3センターを除く)では、9センター(長崎県、栃木県、静岡県、愛知県、香川県、大阪府、千葉県、広島県、佐賀県)が最高の「A」評価を獲得した。

一方、不名誉な「C」評価に甘んじたのは11センター(青森県、岩手県、宮城県、茨城県、群馬県、神奈川県、滋賀県、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県)で、うち5センターは2年連続。「C」評価は東北で3カ所(「A」評価ゼロ)、近畿では4カ所(「A」評価1カ所)を数えることから、地域ぐるみの施策による承継ニーズの発掘などが求められそうだ。

全国平均の評価総合点は上昇

優れた取り組みを継続している上位センターが固定化しつつある傾向もうかがえる中、ABC区分の対象となった45センターの評価の総合点(200点満点)の平均は前年度(151点)比18ポイント増の169点。前年度は2カ所あった100点未満のセンターが無くなったのも、全国平均の評価点数を押し上げる要因となった。

休廃業・解散企業経営者の6割超が70歳以上

2022年版の中小企業白書によると、全国の中小企業経営者の平均年齢は2021年に過去最高の62.8歳に到達。コロナ禍の中で休廃業・解散を迫られた企業の経営者のうち、62.7%を70歳以上が占めた。中小機構は報告書を通し、「限られた人員体制の中で、幅広い事業項目をいかに効率的に進めつつ効果を上げるかの検討も重要となってくる」としている。

産業競争力強化法の規定によると、全国のセンターを支援する中小企業事業承継・引継ぎ支援本部の運営に当たる中小機構は、商工会議所などの認定支援機関による中小企業再生支援業務の評価結果を経産相に報告することになっている。今回提出したのは同業務の事業承継・引継ぎ支援事業に係る事業評価報告書で、中小企業庁が10月28日に公表した。

文:M&A Online編集部

関連リンク:令和3年度に認定支援機関等が実施した事業承継・引継ぎ支援事業に関する事業評価報告書