事業承継時の経営者保証解除を促進 中小企業政策審議会

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中小企業庁(東京・霞が関)

中小企業政策審に金融小委設置

中小企業庁は2月17日、中小企業政策審議会金融小委員会(委員長・家森信善神戸大学経済経営研究所教授)を設置した。ウィズコロナ・ポストコロナに向けて金融面から中・長期的に中小企業を支えていくため、事業承継時の経営者保証解除や中小企業のM&Aを促すエクイティ・ファイナンス(新株発行による資金調達)の普及推進制度などを検討する。

間接金融と新たな資金調達を

金融小委員会では、コロナ禍でかつてない厳しい状況に直面している中小企業の成長を支えるため、今後の間接金融と新たな資金調達の在り方を論議する。

コロナ対策としては官民金融機関による多層的な金融支援が展開されているが、中小企業庁がまとめた資料によると、コロナ契機を含めて債務過剰感を抱える中小企業は約3割に上る。コロナ支援のゼロゼロ融資実行後に金融機関から特段の支援を受けていない中小企業も35%に達している。

一方、2021年8月に金融庁が公表したアンケート結果では、金融機関から受けたい経営改善支援サービスとして「事業承継・事業転換に関するアドバイス・提案」を挙げた中小企業者が31%に上り、より経営に踏み込んだ支援を求めている実態が浮き彫りになった。

経営者保証ガイドラインのチェックシートを見直し

こうしたことを受け、間接金融の最重要課題には、事業承継時における経営者保証の解除促進を位置付けた。

中小企業庁などの調査によると、2021年度上半期は政府系金融機関でさえ新規融資の半数超で経営者保証を外していない。民間金融機関なども併せて現存する融資契約では、従業員50人以下の企業の7割余りが経営者保証を提供している。

小委員会では、国の経営者保証ガイドラインで定められた経営者保証の解除要件を具体化した事業承継時のチェックシートを見直す。47都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターに常駐する経営者保証コーディネーターがチェックシートを運用した段階では要件を満たすと判断したものの、実際には外せなかった案件が4割近くもある背景には、「法人・個人の資産分離」「財務基盤の強化」に関するチェックシート基準の曖昧さもあるとみられる。

事業承継特別保証の運用改善も

また、事業承継時の経営者保証解除を支援するため2020年4月に国が開始した事業承継特別保証の適用が、2021年12月時点で経営者保証全体の0.06%(559件)にとどまっていることにも着目。「EBITDA(税引き前利益に特別損益・支払利息・減価償却費を加算した値)有利子負債倍率が10倍以内」の返済能力要件を満たせないと判断して事業承継特別保証の活用を断念したコーディネーターも71%と多いことから、制度の運用改善を論議する。

エクイティ・ファイナンス普及でM&Aなど促進

このほか、新たな資金調達の在り方については、事業承継を通じたイノベーションや経営改革、M&Aなどを目指す中小企業の成長資金調達手段としてエクイティ・ファイナンスの普及を課題とした。M&AにおけるPMI(M&A後の統合プロセス)の取り組みなど資金提供にとどまらない伴走支援の強化も検討する。

中小企業庁は「これまでのコロナ資金繰り支援の効果検証を行うとともに、中小企業金融について幅広く議論を深めたい」としている。

文:M&A Online編集部

関連リンク:
中小企業庁:中小企業政策審議会金融小委員会(第1回) 配布資料 (meti.go.jp)
金融庁:企業アンケート調査の結果(令和3年8月31日)