「美団点評」創業者、王興CEO【中国経営者シリーズ26 】

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中国には、「美団点評」という中国最大の口コミサイトがある。「美団点評」は「美団網」と「大衆点評」が合併してできたサイトで、香港市場に上場している。今回は美団網の創業者であり、美団点評の現CEOである王興を紹介する。

フォーブスが毎年発表している「中国の富豪ランキング2019版」によると、王興は、第38位にランクインしている。

米留学を中断、帰国して起業

王興は1979年、福建省で生まれた。1997年、中国のエリート大学である清華大学に入学し、電子工学を学んだ。大学では芸術劇団のダンスチームに所属し、「黄土黄」と呼ばれる伝統的なダンスを踊ったりしていたという。2001年、清華大学を卒業し、米国の大学で学ぶための奨学金を得る。

王興は米デラウエア大学で博士課程まで進んだが、2004年初頭、博士号の研究を中断し、中国に戻り事業を始める。「当時、私にはアイデアと勇気しかなかった。学部課程を終えて米国に行ったため、中国には同級生以外の知り合いもいなかった。帰国後、大学の同級生と高校の同級生と一緒に、3人で暗闇の中、模索することになった」と振り返っている。

2005年、王興は、米国で成功していたフェイスブックの事例を調査・研究し、さらに中国国内の事情を考慮した上で、まずは、大学内SNSを立ち上げることにする。名称は「校内網(校内ネットワーク」。サービス開始から3カ月で、3万人のユーザーを獲得した。

2006年、「校内網」はユーザー数を急速に伸ばしていたが、サーバーを増設する資金がなかった。そのため、千橡互動グループに売却せざるを得なかった。売却後、「人人網」と名前を変えた。現在、「人人網」は中国のフェイスブックと呼ばれている。

2007年、王興は「飯否網」と「海内網」を次々と立ち上げる。「飯否網」は文字数が限定されたミニブログで、いわば中国版ツイッター。「海内網」は「校内網」と同じ大学内SNSで、文字や写真を投稿したり、卒業生名簿を保存したりできる。

「美団網」開設、グルーポン・モデルのブーム

そして、2010年に「美団網」を開設した。王興は、共同購入型クーポンサイトで知られる米グルーポンを意識したサイトのアイデアを持っていた。「校内網、飯否網、海内網と、ずっと口コミをを利用して情報を伝えるようなプラットフォームを提供してきた。それが今まではSNSだったが、今回はEコマースとなっただけだ」と言っている。「美団網」の立ち上げにより、中国でのグルーポン・モデルのブームが加速した。

2015年、「美団網」と「大衆点評」が合併し、「美団点評」となった。王興は、新会社「美団点評」のCEOとなった。飲食店評価サイトと言えば、日本では「食べログ」や「ぐるなび」が有名であるが、中国では「大衆点評」が最有力だった(筆者も中国に滞在していた頃は、いつも使っていた)。この合併で、飲食店のみならず、様々な商品の口コミサイトとなった。

無人配送、コロナ対策で注目される

2019年、美団点評は配送分野に進出し、新ブランド「美団配送」を立ち上げた。Uber Eats(ウーバーイーツ)のような出前サービスであり、早くも、2019年7月には1日当たりの出前の数が3000万回を超えた。2020年には、無人配送の分野にも進出し、「非接触デリバリー」を始めた。今、非接触デリバリーは新型コロナ対策でも注目されている。(敬称略)

文:M&A Online編集部