株価急上昇の「ラーメン山岡家」、借入金頼みの経営は続くのか?

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全国に「ラーメン山岡家」を展開する丸千代山岡家<3399>の株価が、12月11日に年初来高値となる2,145円をつけました。10月末の終値は1,709円。ここ1ヵ月半ほどで25%以上株価が上昇しています。

株価が急上昇している背景には、山岡家の好調な業績とそれに伴う配当予想の修正があります。2020年1月期第3四半期の営業利益は前年同期比23.4%増の4億200万円。配当予想を14円から16円に引き上げました。通期の営業利益予想4億5400万円は据え置きましたが、上方修正を見越した買いが先行しています。

しかし、丸千代山岡家のPERは20倍で、競合のハチバン<9950>の37.5倍や、力の源ホールディングス<3561>の30倍などと比べると、やや見劣りがします。その裏には山岡家が借入金に依存し、それを効率的に活用できていないことがありそうです。

この記事では、以下の情報が得られます。

・ラーメン企業の経営状態
・借入金依存度がわかる財務レバレッジ

借入金依存度が日高屋の3倍

ラーメン屋台
画像はイメージ(Photo by フリー素材.com)

「ラーメン山岡家」は全国で160店舗(2019年10月末時点)を展開しています。豚骨を煮込んだスープに極太の麺が特徴。いわゆる「家系ラーメン」とよく似ていますが、厳密には家系に分類されません。2020年1月期の売上予想は137億4900万円です。

丸千代山岡家の経営の特徴として、借入金依存度の高さが挙げられます。同社の財務レバレッジは3.8倍。適正値は2倍程度と言われています。ハイデイ日高屋<7611>は1.2倍。王将フードサービス<9936>は1.3倍です。

財務レバレッジは、「総資産/純資産×100」で表します。純資産が総資産に対して占める割合が小さいほど、財務レバレッジの値は大きくなります。すなわち、財務レバレッジが大きいほど借入金に依存していることがわかるのです。

借金をしていることは「悪」ではありません。企業を成長させるために先行投資をし、確実に投資回収できていれば良いのです。例えば、ソフトバンクグループ<9984>の財務レバレッジは4.7倍です。借入金を上手く活用できているかどうかがポイントです。

低ROAで市場から評価されにくい山岡家

ではここで、ラーメン企業の財務レバレッジ、ROA、PERを比較してみましょう。この指標の比較の意図は、企業の借入金依存度(財務レバレッジ)、効率的な経営(ROA)、市場の評価(PER)を見比べることにあります。

ROAとは総資産利益率のこと。総資産でどれだけの利益(純利益)を稼ぎ出したのかを見ます。PERは株価を1株純利益で割ったもので、株価の割安/割高を判断する尺度のことです。

山岡家のROAは0.6%と、借入金依存度が高いわりに経営効率が悪いことがわかります。同程度の財務レバレッジで「一風堂」の力の源ホールディングスのROAは3.8%、幸楽苑は5.5%と効率よく経営しています。

※値はすべて直近の通期決算時のものです。

企業名 財務レバレッジ ROA PER
丸千代山岡家 3.8倍 0.6% 15.0倍
力の源ホールディングス 3.8倍 3.8% 24.0倍
幸楽苑ホールディングス 3.7倍 5.5% 37.7倍
王将フードサービス 1.4倍 6.6% 25.4倍
ハチバン 1.3倍 4.0% 39.2倍
ハイデイ日高屋 1.2倍 10.0% 27.3倍

王将や日高屋は借入金に依存せず、高ROAを実現しています。競合他社と比較して経営効率の悪い山岡家は、市場からの評価が低くなっているのです。

減損損失の比率が他社の2倍

餃子
画像はイメージ(Photo by フリー素材.com)

山岡家はなぜこのような状態になっているのでしょうか。カギは減損損失にありそうです。

同社は2019年1月期に2億5600万円の減損損失を計上しています。売上高に減損額が占める割合は2%、経常利益に占める割合は60%です。その前の期もほぼ同じ額、同じ割合で減損損失を出しています。

力の源ホールディングスはどうでしょうか。2019年3月期は2億5000万円。対売上の減損割合は1%、経常利益に占める割合は31.5%です。幸楽苑ホールディングスは2019年3月期に2億9100万円の減損を計上しています。売上に占める割合は0.7%、経常利益に占める割合は18%です。

減損損失とは、店舗の見込みキャッシュフローを下回る場合に行う会計処理のことです。例えば、2000万円で新規出店したものの、客足が伸びずに1000万円しか収益が得られない場合、1000万円を貸借対照表の固定資産から減額する処理を行います。

また、減損する金額は損益計算書の経常利益から引かれるため、純利益に影響します。経常利益が4億円台の山岡家が2億円台後半の減損を出しているので、その影響は他社と比較してわかる通り極めて大きくなります。

山岡家の場合、借入金を活用して出店を重ねているものの、思うような投資回収ができずに競合他社よりも高い比率で減損損失を出していることになります。総資産は膨らんでも、利益が減損で引き抜かれてしまい、低ROA状態が続いているのです。

今回、配当予想を引き上げたことが株価上昇に繋がりました。しかし、本来は稼げる業態の開発や出店エリアの見直しなど、高利益体質づくりのための経営戦略の練り直しが必要になると考えられます。

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