公認会計士の望月実さんは、学生向けに就活で役立つ会計の本「学生のうちに知っておきたい会計」「エントリーシートで目にとまる 面接で「できる! 」と思わせる 内定をもらえる人の会社研究術」の2冊の著者。会計士がなぜ就活の本を書いたのか。どのような勉強すれば希望の企業に入社できるのか、会計士になるためにはどのような勉強をすれば良いのか―などについて、学生レポーターの山口萌さんが聞きました。
この中で望月さんは「自分の人間性を売り込むのは大変。しっかり企業研究をすればアピールできる」との考えを示しました。
ー今回の取材に向けていろいろと本を読んだのですが、会社のことをちゃんと調べた方がいいという本はありましたが、その方法を具体的にどうするかまで書いている本はありませんでした。望月さんの2冊を読んで、業界研究ってこうやってやるのだなと分かって大変参考になりました。
「面接では何を売るかが重要です。タレント性が高い人は自分を売ればいいのですが、普通の人はなかなかそうはいきません。何年か前に就職活動をサポートしたことがありますが、何がみんな苦しいかというと、急に自分を大きく見せないといけないところでした」
「エントリーシートの書き方を教えている本などもありますが、人間性の高い人も低い人も関係なく、こういう風に書きましょうとなっています。自分を売っていくことに自信がある人は10人に1人くらいのもので、こういう人にとっては自己PRをすればいいのですけれど、そうではない人は大変困ります」
「自己PRを1分間して下さいと言ってやってもらっても、みんな同じような話で、記憶に残りません。だったら会社のことをしっかり考えているなっていう方が、この学生はちゃんとしっかりやってきたなと思えます」
ーなるほど、下手に自分を出すよりも、いかにちゃんと考えて積み重ねているかをアピールする方がいいということですね。
「私はこれまでに5、6冊会計の本を出版していますが、こうした本を読んでいた学生はほとんどが希望する企業に入社できています。それはなぜだと思いますか」
ー業界のことや会社のことを話せるので面接で、より具体的な対応ができるからではないでしょうか。
「基本的にはそんな感じだと思いますが、それだけ情報感度が高いというか、わざわざ会計の本を読んでいる、その時点で視点が違うということだろうなと思います。私の本は大学の授業で買ったのではなく、もともとファイナンスとか会計に興味のある学生が買ってくれたわけで、私の本を読んだから就職活動がうまくいったのではなく、私が書いたような本を読む気になったから就職活動がうまくいったのだろうと感じます」
「大部分の学生はどのようにして会社研究をしたらいいのか分からないようです。就職活動では一生懸命に自分のキャラを作ろうとして苦労している人も多いようです。そこで学生にダイレクトに役立ちそうな会計書にしてみようと思って、この本を書きました」
ー今は売り手市場ですが、学生の意識に変化はありますか。
「買い手市場でも売り手市場でも本当に就職したい会社に入るのは難しいでしょう。今は私が学生のころよりも、学生の数は減っていますが、それでは東大に入るのが楽になったかというと、そんなことはなく、やはり難しい。就職活動はこれに近い話だと思います」
ー私は商社に関心がありますが、例えば商社だとどのような勉強の方法がありますか。
「商社であれば、勉強会や就職活動の集まりなどがあるでしょう。まずはそういうところに参加してみることでしょう。ただ、参加しているだけではだめで、やはりその会社のことを調べてみることが必要です。ちょっと話しただけでも、その会社のことをよく勉強しているか、そうでないかはすぐに分かります」
ー要は自分でできることをちゃんとやれるかどうかということですね。
「そうですね。就活ってどうしても人間性がでますのでね。面接をする人は目の前の学生を部下にした時にどうなのかということを見ています。この人が部下だと楽できるなというようなことを考えている人もいます。しっかりと詰めたことができる人は部下にしたいという気持ちになるでしょう。仕事って地味なので、その地味なことをちゃんと詰められるというのはPRポイントになります」
ー確かにそうですね。私は学生ベンチャーである広告代理店の手伝いをしているのですが、本当に仕事がきつくて、納期が近づいてくると個人にプレッシャーがかかって大変です。
「やっている時はどんな仕事も苦しいものです。会計士も同じです。要は向いていると思えばのめり込めばいいし、向いていないと思えば別のことをやればいい。私はいろんなことをやりたいと思っていました。数字が好きで文系でしたので、会計士がいいなと思って、やり始めました。会計士の試験は3回目で合格しましたが、3回目に落ちていたら、他の仕事をしていたかも知れません。40歳になって、あの時会計士を受けていればと後悔するのはいやなので、先に勝負をしました」
「もし、受からなかったら自分の責任であり、他の仕事をするしかないと思いました。山口さんはどのように生きたいと思っていますか」
ー私はこの分野なら山口萌だと言われるようになりたいと思っています。いろんなところからお声がかかるようになりたいですね。多少足りない部分があってもそれを上回るものがあって、足りない部分が許されるような人になれるといいなと思います。
「才能がある人ならそれでいいのですが、ものすごく打ちこまないと、そのようになるのは難しいでしょうね」
ー商社でやってみたと思う一方で、ドラマを作ってみたいとも思っています。ベンチャーの会社でやったのが、ノンフィクションでしたので、フィクションが撮りたいと思っています。
「ドラマを撮りたいのなら、まずは撮ってみたらいいのではないでしょうか。3分のものでいいので、撮ってユーチューブなどにあげてみたらいいと思います。まずはやってみることが大事です。これを撮りましたと見せることができたら、そこから展開があるのではないでしょうか。そうした具体的なものがあれば、相談にも乗りやすいのですが、今はふーんとしか言いようがありません」
ーそうですね。よく考えてみます。ところで、会計士になるためにはどのような勉強をすればよいのですか。
「会社に興味が持てるかどうかというのがポイントになると思っています。会計士のテストにはA社とかB社と書いてあり、具体的な企業名は出てきません。決算書を見て企業活動がイメージできるようになることが大切です。決算書は最後の結果に過ぎません。自己資本比率が低いとすれば、なぜ低いのかを考えなければなりません」
「例えば百貨店であれば、同じ時間帯に自己資本比率の高い店舗と低い店舗を見比べたり、ディスプレイの違いを見たりして、数字の背景を知る必要があります。会計士になろうとする人なら、こうした数字の裏側を知ろうとしてほしいと思います」
ー今日のお話をお聞きして、やはりスキルを身につけたいなと思いました。ありがとうございました。
望月 実さん(もちづき・みのる)
1972年、名古屋市生まれ。立教大学卒業後、大手監査法人に入社。監査、株式公開業務、会計コンサルティングなどを担当。2002年に独立。
文:M&A Online編集部