2020年上期のM&A、金額ランキング上位20の顔ぶれはこれだ!

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アークランドサカモトが1085億円を投じて買収するホームセンター中堅のLIXILビバ(さいたま市内)

2020年上期(1~6月)のM&A件数(適時開示ベース)は前年同期を11件上回る406件で、4年連続で増加し、上期として2009年(439件)以来11年ぶりの高い水準となった。新型コロナウイルス感染にもかかわらず、件数の上では影響を跳ねのけた形だ。

一方で、上期の取引金額は1兆4671億円と前年同期(2兆1605億円)に比べ約32%減った。とりわけ、緊急事態宣言と重なった4~6月は3501億円にとどまり、過去10年間で2013年(3481億円)と並ぶ最低レベルまで落ち込んだ。

海外M&A、コロナで大型案件が姿を消す

海外案件は3月以降、件数が減り、大型M&Aがほぼ途絶えており、コロナ感染の世界的拡大の影響が作用したとみられる。こうした中、M&A市場をめぐっては国内回帰の構図となり、件数を稼いだとはいえ、案件サイズそのものは小型化が顕著だ。

上期の取引金額ランキングの上位20は一覧表の通り。

◎2020年上期のM&A:金額ランキング上位20

1 三菱商事、中部電力と共同でオランダのエネルギー企業エネコ(ロッテルダム)を買収(約5000億円)
2 アークランドサカモト、ホームセンター中堅のLIXILビバをTOBなどで子会社化(1085億円)
3 ニチイ学館、米投資ファンドのベインキャピタルと組んでMBOを行い非公開化(999億円)
4 前田建設工業、前田道路をTOBで子会社化(861億円)
5 総合メディカルホールディングス、投資会社ポラリスと組みMBOで非公開化(763億円)
6 米投資ファンドのベインキャピタル、三井E&Sホールディングス傘下の昭和飛行機工業をTOBで子会社化(694億円)
7 大王製紙と丸紅、ブラジルの衛生用品メーカー大手Santher(サンパウロ)を買収(584億円)
8 新生銀行、ニュージーランド最大手のノンバンクUDC Financeを子会社化(515億円)
9 ノーリツ鋼機、DJ・クラブ機器大手のAlphaTheta(旧パイオニアDJ、横浜市)を子会社化(350億円)
10 豆蔵ホールディングス、投資ファンドのインテグラルと組みMBOで非公開化(344億円)
11 オーデリック、MBOを受け入れて非公開化(306億円)
12 グローリー、セルフ注文・決済機器大手の仏アクレレック・グループを子会社化(242億円)
13 投資ファンドのMETA Capital、澤田ホールディングスをTOBで子会社化(208億円)
14 SBSホールディングス、東芝傘下の東芝ロジスティクス(川崎市)を子会社化(199億円)
15 東海カーボン、炭素黒鉛製品メーカーの仏Carbone Savoieを子会社化(197億円)
16 ツムラ、漢方製剤用原料を生産・販売する中国「盛実百草」(天津)を子会社化(187億円)
17 共英製鋼、カナダのMCアルタスチール(ブリティッシュコロンビア州)から電炉事業を取得(155億円)
18 タムロン、創業家の資産管理会社ニューウェル(さいたま市)を子会社化(144億円)
19 カルビー、サツマイモ加工卸販売のポテトかいつか(茨城県かすみがうら市)を子会社化(139億円)
20 シャープ、NEC傘下のNECディスプレイソリューションズ(東京都港区)を子会社化(92.4億円)

1000億円規模以上は三菱商事、アークランドサカモト、ニチイ学館の3件(前年同期は7件)。三菱商事は中部電力と共同で、欧州で電力、ガスなど総合エネルギー事業を展開するオランダのエネコ(ロッテルダム)を41億ユーロ(約5000億円)で買収した。  

一方、国内案件はホームセンター中堅のLIXILビバを1085億円で買収するアークランドサカモトの案件を筆頭に13件を占めた。なかでもニチイ学館、総合メディカル、豆蔵ホールディングス、オーデリックのMBO(経営陣が参加する買収)による非公開化案件が4件ランクインしたのが目立つ。

海外案件の減少を国内でカバーし増勢維持

上場企業に義務づけられた適時開示情報をもとに、経営権の異動を伴うM&A件数(グループ内の再編は除く)について、M&A Online編集部が集計した。

上期は海外案件の落ち込みを国内案件でカバーし、全体として件数増をキープした。全406件を四半期別にみると、1~3月が前年同期比10件増の232件、4~6月も同1件増の174件とプラス圏で推移した。このうち、海外案件は406件中68件で、前年同期の86件から20件近い大幅減となり、さらに単月でも6月は9件と2018年6月以来2年ぶりに月間1ケタにとどまった。

海外案件の後退と並び、コロナ感染が国内でも深刻化した3月を境に目立ち始めたのが案件の小型化だ。上期の取引金額100億円以上の大型案件は19件で、前年同期の30件から3割以上減った。今年に入り、1月4件、2月8件だったが、3月2件、4月1件、5月2件、6月2件で推移した。とくに巨額に上ることが多い海外M&Aが低調なことが響いている。

4~6月の取引金額、7年ぶりの低水準

こうした状況を反映して、上期のM&A取引金額は1兆4671億円(金額公表分を集計)と前年同期を約6900億円下回った。1~3月は1兆1170億円と1兆円台だったが、4~6月は3501億円と7年ぶりの低水準に落ち込んだ。

ただ、4~6月は金額未確定ながら、比較的大型の案件が含まれている。経営再建中の三井E&Sホールディングス(旧三井造船)が艦船事業を三菱重工業に譲渡する方向で協議入りしたほか、オリンパスは赤字が続く映像事業(デジタルカメラなど)を投資ファンドの日本産業パートナーズ(東京都千代田区)に年内をめどに譲渡することで動き出した。

文:M&A Online編集部