【10月M&Aサマリー】3カ月連続で前年を下回る|DCM・ニトリの「島忠」争奪戦も

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「島忠」争奪戦へ…DCMとニトリ(写真は都内、ホーマックはDCMの主要ブランドの一つ)

2020年10月のM&A件数(適時開示ベース)は前年同月比5件減の69件となり、3カ月連続で前年を下回った。1~10月の累計件数では前年を超えるペースを維持しているものの、コロナ禍の出口が見通せない中、停滞感が否めない。前月比では8件増えた。

個別案件で関心を集めたのがホームセンター中堅の島忠を巡る買収合戦。業界最大手のDCMホールディングスが島忠にTOB(株式公開買い付け)を始めたが、家具業界首位のニトリホールディングスが参戦の意向を表明し、業界の垣根を超えた争奪戦が繰り広げられることになった。

10月単月、過去10年で3番目となお高水準

全上場企業に義務付けられた東証適時開示情報のうち、経営権の異動を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A Online編集部が集計した。

10月のM&Aの総開示件数69件の内訳は買収56件、売却13件(買収側と売却側の双方が開示した場合は買収側でカウント)。このうち海外案件は15件中、ほぼ半数の7件が売却案件で、不採算の現地事業を切り離す動きが目立った。

月間のM&A件数は8月に4月以来4カ月ぶりに前年を下回り、以降、9月、10月と前年に届かなかった。ただ、10月単月を過去10年でみると、今年の69件は3番目で、なお高水準をキープしている。一方、8月、9月と続いた取引金額1兆円を超える超大型M&Aは途切れた。

こうした中、金額トップはスイスの大手金融ソフトウエア企業アバロック・グループを買収するNECの案件。アバロックを傘下に置く持ち株会社(所在地オランダ)の全株式を約2360億円で取得する。世界規模で進展する金融DX(デジタルトランスフォーメーション)領域での事業強化を狙いとする。

島忠TOB、先行するDCMにニトリが待った

コロナ禍の中、巣ごもり需要を取り込んで業績好調のホームセンター業界を揺るがすことになったのが島忠の争奪戦だ。最大手のDCMは10月初めに、首都圏を地盤とする中堅の島忠の完全子会社を目的にTOBを開始。買付金額は最大1636億円。島忠も賛同するTOBは成立が確実視されていた。

ところが10月末、隣接する家具業界から最大手のニトリホールディングスが島忠へのTOBに名乗りを上げた。買付価格はDCMを1300円上回る5500円を提示した。ニトリは11月中旬にTOBを開始する予定。

DCMによる島忠へのTOB期間は11月16日までで、買付価格の変更を含めて今後の出方が注目される。ニトリがTOBを制すれば、業界の垣根を崩して、ホームセンター業界再編の呼び水になる可能性がある。 

◎10月M&A:取引金額10億円以上の案件

1 NEC、スイスの金融ソフト大手企業アバロック・グループを買収(2360億円)
2 ニトリホールディングス、ホームセンター中堅の島忠に対して子会社化を目的にTOBを開始予定(2142億円)
3 DCMホールディングス、ホームセンター中堅の島忠をTOBで子会社化(1636億円)
4 アステラス製薬、体内埋め込み型医療機器開発の米iota Biosciencesを子会社化(134億円)
5 アウトソーシング、外国人向け人材サービスのアバンセホールディングス(愛知県知多市)を子会社化(45.6億円)
6 タカラトミー、玩具メーカーの米Fat Brain Holdingsを子会社化(43.3億円)
7 アスコット、マンション分譲のTHEグローバル社を子会社化(30億円)
8 ベルーナ、アパレル通販事業のマキシム(神戸市)を子会社化(16.5億円)
9 メディアドゥ、電子書籍関連事業の米国ファイアーブランド・グループ2社を子会社化(15億円)
10 ジーニー、全文検索エンジン関連ソフト開発のビジネスサーチテクノロジ(東京都渋谷区)を子会社化(11.2億円)

今年初のロシア案件

海外M&Aでは今年初のロシア案件があった。フェローテックホールディングスはドイツ子会社を通じて、サーモモジュール製品メーカーのロシアRMT社(ニジニ・ノヴゴロド市)の出資持ち分60%(議決権ベース)を取得し、傘下に収めた。取得金額は1890万ルーブル(約2580万円)。

RMTの本社があるニジロ・ノヴゴロドはモスクワの東方にあり、ロシア国内第5の都市で、モノづくり産業の集積地の一つ。サーモモジュール製品は板状の半導体冷熱素子をいい、通信基地局や光ケーブル、EV(電気自動車)用各種センサーなどに需要が見込まれている。

平和、アコーディアからゴルフ場4カ所取得

ゴルフ関連でも動きがあった。アジアゲートホールディングスは国内で4ゴルフ場を運営する子会社をサモアの投資会社に売却することを決めた。新型コロナの影響による来場者減少などで累積損失の解消に見通しが立たない状況にあった。

一方、平和はゴルフ場運営大手のアコーディア・ゴルフから同社傘下のゴルフ場4カ所を取得する。平和は子会社のパシフィックゴルフマネージメント(PGM)を通じて、かねてゴルフ場の買収を推進中だ。

中古クラブ専門店運営のゴルフ・ドゥは、同社のフランチャイズ店を運営するゴルフ・ドゥ九州(熊本市)から6店舗を取得。九州地区での直営事業の強化につなげる。

文:M&A Online編集部