経営者の相続対策、「信託銀行」の活用法は?

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写真はイメージです。

今回は上場会社の株を大量に保有している場合の相続対策と未成年の相続人に事業を引き継がせたい場合の有効なスキームを紹介する。

上場株を現金化したい場合

上場会社の創業一族などの場合、当該企業の重要な情報を入手しやすい立場にあるため、保有する上場株を売却する際、インサイダー取引の観点から売却可能な時期が短期間となるケースがある。

しかし、信託銀行の「株式処分信託」を活用すれば、信託契約時に顧客がインサイダーフリーの状態であれば、信託期間中は信託銀行による売却が可能なことをご存じだろうか?

顧客は信託期間中に売却の指図はできないが、「株価が○○円まで上昇すれば○○株売却する」という仕組みの構築が可能にになる。①インサイダーフリーとなり売却時期に条件が付けられること、②ある一定の株価以上であれば信託銀行がタイミングを見て売却をしてくれるーの2つのメリットがある。

また、上場株を売却し流動性が高い預金にしたはいいがあまりにも金利が低く、流動性を確保したうえで何か検討をしたい方もいるだろう。そんな人におすすめなのが信託銀行が提供しているDPM(単独運用信託)。顧客と信託銀行が中長期的な運用方針を決定し、信託銀行がその運用方針に則り、期中の管理・運用を行う。

DPMは信託契約商品なので、「遺言代用信託」 などの顧客の遺すニーズに対応する信託ソリューションを 「特約」 という形で付与もできる。

テーラーメイド型の運用で、信託報酬などのコスト面が割安なことに加え、将来的にはDPMに信託契約を付加し、子供などへ承継できるメリットがあり、多くの富裕層が利用している。

未成年の後継者に会社を引き継がせたい場合

経営者などのオーナーの相続対策で、未成年の相続人などがいる場合には、保有株式の議決権行使に留意した承継対策を検討する必要がある。

信託銀行の議決権行使指図者特約を付加することで自身の相続発生の際に上場株式受益権を取得した未成年の相続人に代わって、議決権行使の指図を行うことが可能になる。

自社株の議決権行使にあたっては自身が指名した人が相続人に代わって議決権を行使することで、会社の重要な議決などを滞りなく行使できるようになる。

自身に万が一のことがあった場合、子どもがまだ幼少のため相続をした自社株式の議決権行使が滞らないようにしたいと考える顧客は多いと思われる。

万が一、第三者が新受益者(子ども)にとって不利益となるような行為を防止するために、配偶者を受益者代理人とした特約を付加することで、本信託の解約権を配偶者に付加できる仕組みで受託も可能となる。

まとめ

信託銀行を活用し、オーナーならでは悩みである株の処分と未成年に株を引き継がせたい場合に有効なスキームを紹介した。信託銀行はメガバンクなどの普通銀行と違って「尖ったニーズにささる」 さまざまなスキームがあり、今回取り上げたのもほんの一例に過ぎない。

文:M&A Online編集部