M&Aの相続対策、暦年贈与ができなくなる? 相続税・贈与税の一体化とは?

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写真はイメージです。

M&Aを実行して多額の現金が入ってきた経営者の大きな悩みの1つが相続対策。相続税は2015年に大きく改定され、東京都に限ると相続税を払う人は15%を超えている。

地価の高い東京の場合、課税価格の平均は1億8405万円、税額は3030万円と高額だ。この高額な相続税を相続発生開始後10ヵ月以内に収めなければならないのはかなり酷だろう。

特に現金がなく土地や建物を相続した場合はかなり厄介になる。少しでも相続税を低くするために年間110万円までは非課税になる暦年贈与を利用している経営者も多いだろう。

しかし、2022年以降この暦年贈与にメスが入る可能性が高くなったことをご存知だろうか?

暦年贈与の改定が議論されている

税理士や銀行など税金に注目している関係者の間に衝撃が走った。昨年12月に発表した「令和3年度税制改正大綱」に次の一文が載ったからだ。

「相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直す」

つまり、贈与税を廃止し相続税に一本化する可能性があると言うことを示した。ではどのような方法がとられるのだろうか。一つは暦年贈与を廃止し相続時精算課税制度のみ残す方法である。もう一つは暦年課税を存続させるが実態を相続税に近づける方法になる。

具体的には、現在は暦年課税は相続発生場合、3年以内の贈与については、相続扱いにしているが、これを10年以内あるいは15年以内などに拡大するというものだ。

相続扱いにする期間を長くすることによって実質相続税と贈与税を一体化するという内容になる。実際、ドイツやフランスなどは10年以内あるいは15年以内の贈与は相続税と同じ扱いにしており日本が導入する可能性は非常に高いといえるだろう。もし、相続税と贈与税を一体化することが決定されると相続対策の方法はまた1つ少なくなってしまう。

贈与で節税するなら急ぐ必要がある!

仮に、相続税と贈与税が一本化されることが決定されても、決定前にさかのぼって効力を発揮することはまずないだろう。つまり、2021年現在であれば贈与を使った対策はまだできるのだ。

一般的に暦年贈与は非課税の110万円以内に抑えることが一般的ではあるが、場合によっては110万円を超える贈与を検討する必要がある。贈与税と相続税の金額を計算し、適切な贈与税の金額を決めなければならない。

最低税率である10%以内に贈与税を抑えるためには330万円が1つの目安になる。適切な贈与額を計算するのは素人ではなかなか難しいので税理士などの専門家に頼むのが良いだろう。

まとめ

今回は、相続税と贈与税が一体化される可能性について説明した。M&Aを実行し多額の現金が入ってきた経営者にとっては頭が痛い問題だろう。大切な家族にスムーズに資産を移転させるためには様々なことを検討しなければならない。税制が変わっていない今であれば多くの対策を打つことができるだろう。相続対策はめんどくさいものではあるが実行するのとしないとでは後々大きな差になる。

文:M&A Online編集部