「相続」を「争続」にしないために!遺言信託の活用|経営者のためのM&A出口戦略

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M&Aを行うと、多額のお金が経営者のもとに入ってくる。この資金をもとに悠々自適に、セカンドライフを送ろうと思っている方も多いだろう。しかし、自分で使い切れないほどのお金が入ってくると相続に気をつけなければならない。

「誰に何を相続させるか・いくら相続させるのか」を決めておかないと、いざ相続が発生した時、揉めてしまう可能性が高い。そこで、スムーズに相続を行うために便利な遺言信託について説明する。

遺言信託の4つのメリット

遺言信託は、信託銀行などの銀行が遺言書の作成や遺言書の保管・相続手続きを行ってくれるサービスのこという。遺言信託のメリット・デメリットについて説明していく。

遺言信託の主なメリットは4つある。
・遺言書の作成のアドバイスをしてくれる
・公正証書遺言の証人になってくれる
・銀行の本店の金庫で遺言書を保管してくれる
・相続人に代わって銀行が相続手続きを行ってくれる

遺言信託のそれぞれのメリットについてわかりやすく説明していく。

遺言書の作成のアドバイスをしてくれる
遺言信託の契約をすると、銀行は遺言書の作成のアドバイスをしてくれる。遺言信託のサービスを提供している銀行の多くは、大手税理士法人と提携しているケースが多い。相続税の節税になる遺産配分のアドバイスや法定相続人以外に資産を渡したい場合のアドバイスなどをしてくれる。

自分で遺言書を作る事はもちろん可能だ。しかし自分で遺言書を作成する場合、なかなか相続税の節税になる資産配分を決めることは難しいだろう。

税理士や弁護士などの専門家のアドバイスを受けて遺言書を作成できることは、遺言信託の大きなメリットといえる。

公正証書遺言の証人になってくれる
公正証書遺言を作成するためには、2人の証人が必要であることをご存知だろうか? 婚姻届のように2人の証人が必要になるのだがこの証人を見つけることがなかなか難しい。遺言書の中身を見せることができる信頼できる人はなかなかいないからだ。

証人を見つけることができず、公正証書遺言の作成を諦める方もいる。しかし、遺言信託の契約をすれば、銀行の支店長や担当者が公正証書遺言の証人になってくれる。銀行の支店長や担当者が公正証書遺言の中身をばらす心配は無いので大きな安心感につながるだろう。

銀行の本店の金庫で遺言書を保管してくれる
公正証書遺言を作成する際、同じ遺言書を3通作成することが一般的だ。1通は公証役場が保管し、残り2通は遺言作成者が保管することになる。

遺言信託を契約すると、遺言を作成者が保管する2通のうち、1通を銀行の本店の金庫に保管してくれるので安心だ。万が一自分で保管した分をなくしてしまった場合、銀行に問い合わせをすればコピーをもらえる。

相続人に代わって銀行が相続手続きを行ってくれる
遺言信託は、遺言書の作成や保管だけでなく相続が発生した時も便利だ。相続手続きを一度でも経験したことがある方はよくお分かりだと思うが、相続手続きはかなり複雑でめんどうくさい。被相続人(亡くなった方)の、生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本や印鑑証明書・相続人全員の印鑑などが必要になる。

これらの手続きを銀行が代わりに行ってくれるので、相続人の負担はかなり楽になるといえるだろう。

デメリットにも注意

メリットの多い遺言信託ではあるが、遺言信託には大きなデメリットがある。それは手数料が高いことだ。多くの銀行では遺言信託の最低手数料を100万円程度に設定していることが多い。

また資産規模によって、最大1000万円程度まで手数料を取られることになるので、遺言信託を契約する際は手数料に注意することが必要だ。

遺言信託は遺言書の作成のアドバイスや相続手続きを銀行が代わりに行ってくれるなど様々なメリットがある相続商品だ。多額の手数料がかかる商品ではあるが、資産家にとっては利用するメリットが大きい商品ではないだろうか?

文:M&A Online編集部