【ソフィアHD】「表明保証違反」を理由に、調剤薬局の子会社化を中止

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東証では連日、上場企業による数多くの適時開示がある

M&Aをテコに調剤薬局事業を拡大中のソフィアホールディングス(HD)<6942>が1週間前に公表したばかりのエイエムファーマ(山口県宇部市。調剤薬局を1店舗経営)の子会社化を中止すると発表した。最終契約締結を前に、売り手側に重大な表明保証違反に該当する事項が確認されたとしている。

今回のケースを含めて、年明けの1月だけで買収撤回はすでに3件(東証適時開示ベース、このほか延期が1件)となり、昨年1年間の件数に早くも並んだ。

子会社化の公表から1週間で“ご破算”

ソフィアHDは株式市場が休みの週末土曜日(26日)に、エイエムファーマの子会社化中止を発表した。1月19日の基本合意の発表から、わずか1週間後という異例の早さ。それ以上に注目されるのが買収撤回の理由。詰めの段階で買収金額が折り合わず、M&Aを断念するケースはあるが、今回のように、適時開示の資料に表明保証違反の文言が明記されるのは珍しい。

エイエムファーマは宇部市内で調剤薬局1店舗を持ち、直近業績は売上高2億2000万円、営業利益3万4000円、純資産4400万円。全株式を2億1500万円で2月1日付で取得する予定だった。

表明保証」とはそもそも何か。表明保証とは、売り手が買い手に対して、契約締結時点における対象企業の財務や法務など一定の事項について事実を表明し保証する条項のこと。デューデリジェンス資産査定)だけでは完全に把握しきれないリスクの発生に備えるのが狙いがある。違反があれば、買収の基本合意を解消、場合によっては損害賠償請求に発展する。

ソフィアHDはインターネット関連事業を主力とするが、経営多角化の一環として調剤薬局事業を新たな柱に育てる方針を打ち出している。昨年1年間だけで、調剤薬局9件(子会社化5件、事業取得4件)の買収を手がけた。買収総額は約12億円。地区は岩手、福島、栃木、東京、神奈川、大分、鹿児島まで多岐にわたる。

実は、同社はエイエムファーマの子会社化の中止と同時に、大阪府内で7店舗を経営する泉州薬局(大阪府岸和田市。売上高11億4900万円、営業利益2300万円、純資産1億800万円)の子会社化を発表。買収金額は10億1400万円で、昨年1年分にほぼ匹敵する“大型”案件。今回思わぬ形で買収撤回があったものの、M&Aのピッチが衰える気配はなさそうだ。

システムハウスの草分け企業として名をはせた歴史も

ソフィアHDは1975年にソフィアシステムズとして設立。システムハウスの草分け企業として名をはせた歴史を持つ。1988年に店頭市場(現ジャスダック)に上場した。

曲折を経て、2007年に持ち株会社「ソフィアホールディングス」を設立。2009年に傘下のソフィアシステムズを電気機器開発のソーワコーポレーション(現Showa&Sophia Technologies、川崎市)に譲渡した。昨年2月、調剤薬局チェーン(約250店)を展開するE-BONDホールディングス(埼玉県松伏町)と業務提携した。

今年に入って買収撤回は今回を含めて3件。早くも、出だしの1月で昨年と同数となった(表参照)。

〇買収撤回のケース(東証適時開示ベース)

2019年
東京産業 重電向け部品販売のKDIグローバルマネジメント(横浜市)の子会社化を延期
ギフト 家系ラーメン「せい家」展開のトップアンドフレーバー(東京)の子会社化を中止
夢真HD JSC(東京)の建設技術者派遣事業の取得を中止
ソフィアHD 調剤薬局のエイエムファーマ(山口県宇部市)の子会社化を中止
2018年
LIXILグループ イタリアの建材製造ペルマスティリーザの子会社化を中止
ヨシムラ・フードHD 日水製薬医薬品販売(東京)の子会社化を中止
セプテーニHD ネット広告の韓国eMFORCEの子会社化を中止

※HDはホールディングス

文:M&A Online編集部