【M&Aランキング】1~3月期 企業別の件数・金額上位は?

alt
資本市場の総本山「東証」…適時開示制度の運営元でもある

コロナ禍の状況が続く中、M&A戦線も2021年の第1コーナーを終えた。M&A Online編集部が1~3月の企業別のM&A件数(東証適時開示ベース)を調べたところ、製造系派遣大手のアウトソーシングが5件と最も多かった。同社は2020年に年間5件のM&Aを手がけたが、これに早くも並んだ。

一方、取引金額1000億円を上回る巨額案件は前年1件にとどまったが、今年は3カ月間で5件を数える。米IT企業を1兆円超で買収する日立製作所をはじめ、金額上位には海外案件が並んだ。

アウトソーシング5件、アイカ工業とサンフロンティア不動産は各3件

1~3月のM&A件数は前年同期(243件)にほぼ並ぶ242件。年明け1月は53件と前年同月比21件の大幅減となったが、2月は一転して95件に急反発、3月も94件となり、2カ月連続で2008年以来13年ぶりの高水準を記録した。前年のこの時期は新型コロナウイルス感染拡大の影響が本格化する前だったが、未曽有のコロナ禍でかえって勢いが増した格好だ。

1~3月中に複数(2件以上)のM&Aを発表した企業は22社あった。その中でトップはアウトソーシングの5件。内訳は人材サービス関連4件(うち1件は豪州企業)、電気工事関連1件で、いずれも買収案件。

アウトソーシングは人材サービス業界の“M&A巧者”として知られる。過去10年間のM&A件数は国内外でおよそ30件に上り、ここ数年は英国、ドイツ、オランダ、豪州など海外買収に積極的に取り組んでいる。

件数2位はアイカ工業、サンフロンティア不動産の各3件。両社とも前年は1年を通じてゼロだった。メラミン化粧板大手のアイカ工業は2019年に5件のM&Aをすべて中国、ベトナムなど東南アジアで手がけたが、M&Aを再開した今年も3件中2件は台湾、マレーシア企業が相手。

2件は19社。このうち経営再建中のオンワードホールディングス、エアトリの場合、2件がいずれも売却案件だった。

◎2021年1~3月:企業別の件数ランキング(HDはホールディングス、Gはグループの略)

5件 アウトソーシング
4件 なし
3件 アイカ工業、サンフロンティア不動産
2件 GCA、SHIFT、JKホールディングス、エアトリ、オリンパス、オートバックス、オンワードHD、北の達人コーポレーション、クレアHD、サムティ、全国保証、高松コンストラクションG、帝人、デジタルハーツHD、ビーネックスG、ひかりHD、マネックスG、ミナトHD、リテールパートナーズ(以上19社)

日立は1兆円買収、資生堂はCVCに1600億円売却

取引金額1000億円超の大型M&A5件中、日立、ルネサスエレクトロニクス、ブリヂストン、資生堂はいずれも海外案件。国内企業間では帝人が武田薬品工業から2型糖尿病治療薬事業を買収する案件が5位で最も大きく、その額は約1330億円。

資生堂は「TSUBAKI」「SENKA」などのブランドでヘアケア・スキンケア商品を展開するパーソナル事業を大手投資ファンドの英CVCキャピタル・パートナーズに約1600億円で売却を決めた。先に、東芝に買収提案したことが伝えられ、がぜん注目の的になっているのが他でもないCVCキャピタルだ。

断トツは日立による米グローバルロジックの買収。有利子負債の返済額を含めて総額約1兆368億円に上り、日立として過去最大の買収となる。日立独自のIoT(モノのインターネット)基盤「ルマーダ」の世界展開に弾みをつける狙いがある。

◎2021年1~3月:企業別の金額上位ランキング

1 日立製作所 米IT企業のグローバルロジックを買収 1兆368億円
2 ルネサスエレクトロニクス アナログ半導体大手の英ダイアログ・セミコンダクターを買収 6157億円
3 ブリヂストン 米国建材子会社ファイアストン・ビルディング・プロダクツをスイス企業に譲渡 3500億円
4 資生堂 パーソナルケア事業を英投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズに売却 1600億円
5 帝人 武田薬品工業から2型糖尿病治療薬事業を取得 1330億円
6 MBKパートナーズ 介護事業のツクイホールディングスをTOBで子会社化 490億円
7 ソニー 米音楽出版社コバルト・ミュージックから音楽配信サービス「AWAL」事業を買収 452億円
8 オリンパス イスラエルの医療機器メーカー、Medi-Tateを子会社化 272億円
9 シティインデックスイレブンス MBOを実施中の日本アジアグループを対抗TOBで子会社化→不成立に 264億円
10 イグニス 米ベインキャピタルと共同でMBOを実施し、株式を非公開化 263億円
11 帝人 再生医療製品開発のジャパン・ティッシュ・エンジニアリングをTOBで子会社化 216億円
12 秀和システム 中堅家電メーカーの船井電機をTOBで子会社化 209億円
13 日本エスコン 第三者割当増資を行い、中部電力に傘下入り。中部電の持ち株比率は33%から51%余りへ 204億円
14 サカイオーベックス MBOで株式を非公開化→不成立に 176億円
15 ユニゾン・キャピタル 精神科領域の訪問看護事業を手がけるンN・フィールドをTOBで子会社化 155億円
16 東海東京フィナンシャル・HD エース証券(大阪市)をTOBで子会社化 113億円
17 アイ・シグマ・キャピタル 昭和電工傘下の化学品商社、昭光通商をTOBで子会社化 74億円
18 ユニマット・リタイアメント・コミュニティ ユニマットライフ(東京都港区)のTOBを受け入れ、株式を非公開化 60.7億円
19 全国保証 筑波銀行傘下の筑波信用保証(茨城県つくば市)を子会社化 56.5億円
20 オリンパス オランダの医療機器メーカー、クエスト・フォトニック・デバイセズを子会社化 46億円

文:M&A Online編集部