「M&A仲介」各社、初の業界団体を旗揚げ

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写真はイメージです(東京・大手町のビジネス街)

M&A仲介業者による初の業界団体「M&A仲介協会」(代表理事・三宅卓日本M&Aセンター社長)が10月1日に発足した。

後継者不足などに直面する中小企業が安心してM&Aに取り組める基盤整備を業界横断で推し進める。M&A市場の急速な拡大に伴い、十分な人材や経験・ノウハウを持たない仲介業者の参入が懸念されており、適正な取引ルールの徹底などを通じて、M&A仲介サービスの品質向上と業界の健全な発展を目指す。

日本M&Aセンターなど上場5社で設立

M&A仲介協会の設立は中小企業庁の後押しで実現した。当初会員は日本M&Aセンター、M&Aキャピタルパートナーズ、ストライク、オンデック、名南M&Aの5社。2022年1月以降、全国のM&A仲介業者や地方銀行、信用金庫・信用組合などに広く参加を呼び掛ける。

中小企業が当事者となるM&A案件は年間3000~4000件とされ、過去10年でほぼ倍増。最大の要因が中小企業を取り巻く後継者不足の深刻化で、近年、M&Aを活用した第三者への事業承継を模索する動きが活発化している。こうしたM&A市場の盛り上がりを受け、仲介分野を中心に新規参入もうなぎ上りで、専門業者だけで300社を超えるとされる。

8月に「支援登録機関制度」がスタート

M&A仲介業者は売り手と買い手をマッチングする、いわば“仲人”役。ただ、上場クラスの大手から、個人経営の業者まで企業規模がまちまちなうえ、参入に際して不動産業などと異なり、公的資格が問わることがないことから、専門性に疑問符がつく業者も少なくない。また、買い手と売り手の双方の立場を代弁するため、利益相反の指摘も根強い。

一方、中小企業も①M&Aの知見がなく、進め方が分からない②手数料などの目安が見極めにくいことなどがネックとなって、M&Aをためらうケースもあるとされる。

こうした中で、中小企業庁は今年4月、中小企業のM&A推進を目的に官民で取り組む「中小M&A推進計画」(5カ年)をまとめ、M&A支援登録機関制度の創設とM&A仲介業者による自主規制団体の設立を盛り込んだ。

登録機関制度は8月に運用が始まり、M&A仲介業者154件をはじめ、FA(フィナンシャルアドバイザー)業者、金融機関、税理士、公認会計士などから493件の登録申請(9月6日時点)があった。

適正な取引ルール徹底、苦情相談窓口も

これに続いて今回設立にこぎつけたのがM&A仲介協会。具体的な活動として、M&A仲介の公正・円滑な取引の促進、中小M&Aガイドライン(中小企業庁が2020年3月策定)を含む適正な取引ルールの徹底、M&A支援人材の育成、苦情相談窓口の設置などに取り組む。

中小企業庁によると、2025年には経営者が70歳を超える245万社のうち127万社が後継者未定のままで、半数の60万社は黒字廃業の危機にあるとされる。M&A仲介業界には、中小企業の新たな成長機会の創出をサポートする役割が期待されている。

代表理事の三宅氏をはじめ、理事を務める中村悟・M&Aキャピタルパートナーズ社長、荒井邦彦・ストライク社長、久保良介・オンデック社長、篠田康人・名南M&A社長の各氏は10月7日、都内で記者会見を行い、協会設立の目的や事業内容について説明する予定。

文:M&A Online編集部