2022年「M&A版甲子園」、都道府県別の“勢力図”は?

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各都道府県の東京事務所が入る「都道府県会館」(東京・永田町)

甲子園では連日、郷土の声援を背に高校球児の熱戦が繰り広げられているが、ビジネスの世界でもM&Aの健闘が続いている。コロナ禍の影響を受けながらも、M&A件数はリーマンショック(2008年)後の最多を記録した前年を上回る高水準で推移中だ。「M&A版甲子園」と銘打ち、2022年M&A戦線における各都道府県の“勢力図”を眺めてみるとー。

北海道など7道府県、前年を上回る

上場企業の適時開示情報のうち経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)は今年に入って534件(8月9日時点)を数え、前年の同じ期間を10件上回る。このままのペースでいけば、年間900件台(2021年は877件)乗せが視野に入る。

ただ、全M&Aのうち国境をまたぐ海外案件はここまで85件と前年より13件少なく、国内案件が主導する展開がより鮮明になっている。今年に入り、ロシアのウクライナ侵攻、米国の金融引き締めによる急速な円安などで海外投資に慎重姿勢が広がっていることが背景にある。

では、こうした状況下、各都道府県のM&A事情はどうなのか。全国的なM&Aの分布状況を大づかみすることを目的に、買い手、売り手、対象(自社や子会社・事業)のいずれかの立場でM&Aにかかわった件数を都道府県別に単純集計(都道府県をまたがるM&Aの場合、重複でカウント)したところ、一覧表(下記)のようになった。

8月9日時点ですでに前年の件数を上回ったのは北海道、岩手県、埼玉県、長野県、京都府、宮崎県、沖縄県の7道府県。埼玉県は前年に件数を落とした反動で、例年並みのペースに戻った。長野、京都も着実に件数を積み上げている。

秋田、佐賀はゼロ件

東京都(410件)、大阪府(81件)の1~2位は不動。これに神奈川(36件)、愛知(34件)、福岡(23件)の各県が続いた。例年トップ10に入る兵庫県はここまで8件と落ち込みが目立つ。

また、買い手、売り手、対象のいずれにも該当せず、ゼロ件だったのは秋田、佐賀の2県あった。1件だけというのも11県あるが、いずれの県も買い手に回ることの多い上場企業の数が少ないことが共通する。

◎都道府県別M&Aの推移(買い手・売り手・対象の所在地を単純集計。※2022年は8月9日時点)

2020年 2021年 2022年
北海道 25 18 19
青森県 1 1 1
岩手県 2 10 12
秋田県 0 1 0
宮城県 9 8 4
山形県 1 2 1
福島県 9
4
2
群馬県
11
7
3
栃木県
7
7
2
茨城県
11
17
5
埼玉県
27
14
19
千葉県
17
27
10
東京都
677
682
410
神奈川県
52
50
36
山梨県
4
4
2
長野県
15
12
15
新潟県
11
12
3
富山県
6
6
4
石川県
10
13
7
福井県
1
8
4
岐阜県
10
13
8
静岡県
14
20
11
愛知県
59
70
34
三重県
6
3
2
滋賀県
2
5
1
京都府
24
18
20
大阪府
114
125
81
兵庫県
33
30
8
奈良県
3
1
1
和歌山県
2
0
1
鳥取県
2
0
1
島根県
3
1
1
岡山県
8
7
3
広島県
9
14
11
山口県
4
5
2
徳島県
2
5
3
香川県
5
2
1
愛媛県
8
5
1
高知県
1
2
1
福岡県
31
29
23
佐賀県
0
1
0
長崎県
2
0
2
熊本県
6
1
2
大分県
5
2
2
宮崎県
1
1
3
鹿児島県
1
3
1
沖縄県
4
1
3

岩手県、東北で断トツ

なかでも岩手県は12件と東北6県で突出し、宮城県(4件)の3倍となった。東北のM&A動向をみると、経済規模が大きい宮城県が他県をリードし、福島県が続く形が長年のパターンだったが、2021年を境に流れが変わった。岩手県が宮城県を押さえてトップに立ち、2022年もここまで宮城県を大きく引き離す。

ただ、岩手県には特有の事情もある。昨年6月に東京都から岩手県に本社(登記上)を移転したエルテス(東証グロース)が1社で今年5件の買収案件を手がけたことで件数が跳ね上がったのだ。昨年も同様に、県内に本社を置くネクスグループ(東証グロース)が経営再建の一環として年間5件の子会社・事業を売却し、件数を押し上げた経緯がある。

文:M&A Online編集部