事例2:買収先の経営者が保身に動く可能性がある場合

別の事例を紹介しましょう。

製造会社のX社は、資材メーカーY社から資材を仕入れており、X社はY社を買収する事でより安く、安定的に資材を仕入れるようにしたいと考えました。しかし、その会社がもしひとつになった場合には、X社の購買部とY社の営業部は必要がなくなります。その結果、経費は格段に減りますので、経営者としては魅力的な提案かもしれませんが、もし仮にY社の社長Z氏が営業部出身であれば、社内の政治的力としても出身部署がなくなるのはM&A後の自分の立場が危ういと考える可能性があります。

経営者としてはM&Aの旨味を理解しているけれども、Z氏が保身のために、このM&Aを実現させてはいけないと動き始めるかもしれません。こういった場合にも、相手の社長の立場をM&A後にどのように用意しているのかを強調してあげられるだけで、違う結果になる可能性がある事は想像ができます。

M&Aの交渉は、実際には人間と人間がやることですので、相手の心配事を取り除いてあげられるような血の通ったプレゼンをする必要があります。

その為には、基本的な商談と同様に、相手の会社の事を事前にリサーチし分析しておくと同時に、話をしている相手自身のことも熟知しておかなければならないのです。

文:小間 康裕