「M&A(合併・買収)」と聞いても、個人にはあまり関係ないと感じるのではないでしょうか。それは、M&Aについて、上場企業間で行われる敵対的買収や巨額マネーの印象が強いからかもしれません。
でも、個人でも手軽にM&Aに関わることができる方法があります。それは、M&Aをテーマにした投資信託を購入することです。個人でM&Aが行えるわけではありませんが、M&A視点での投資を間接的に行うことができます。
ここではM&Aをテーマとした投資信託とは、どのような金融商品なのかを取り上げます。また、この投資信託を購入してみたい場合の注意点も見ていきます。なお、具体的な商品名も取り上げますが、個別の金融商品を推奨するものではありません。また、投資信託はリスクのある商品であり元本割れの可能性もあるため、投資は自己責任で行ってください。
まずは、投資信託について簡単に説明します。投資信託とは、小口の資金を投資家から集めて、大きな資金にして、専門家が運用してくれる金融商品です。そして、その運用成果が投資家それぞれの投資額に応じて分配される仕組みとなっています。実際に、集めた資金をどのような対象に投資するかは、投資信託ごとの運用方針に従って専門家が行います。
では、「○○をテーマにした投資信託」とは、どのような投資信託でしょうか。投資信託には数多くの種類があるのですが、ひとつのテーマに基づいて投資対象を決定していく種類の投資信託があります。一般に「テーマ型投資信託」や「テーマ型ファンド」などと呼ばれる投資信託です。例えば、「環境」をテーマとした投資信託であれば、地球温暖化対策やエコ活動を活発に行っている企業を投資先としたりします。
つまり、「M&A」をテーマとした投資信託は、「テーマ型投資信託」の一種で、集めた資金を「M&A」というテーマに基づいて投資先が決定され運用されていく投資信託なのです。
例えば、以下のような商品があげられます。
・明治安田日本株バリューアップ・セレクト100
・三井住友DSアセットマネジメント M&Aフォーカス・ファンド
・東京海上・グローバルM&Aフォーカスファンド(為替ヘッジなし)
M&Aをテーマにした投資信託だからといって、投資信託で集めた資金で実際に企業の合併や買収といったM&Aを行っているのではありません。
これらの投資信託は、投資先の決定や売買のタイミングをはかったりするのに「M&Aの視点から様々な分析する」という切り口を用いて運用されています。
では、具体的な事例を見ていきましょう。
一例として、三井住友DSアセットマネジメントが運用する「M&Aフォーカス・ファンド」の運用手法を見てみましょう。
この投資信託は、M&A価値評価の観点から魅力的な国内企業に選別投資していくのが特徴です。
まず、投資銘柄を絞り込む過程で「M&Aレシオ*」という指標を用いています。
*「M&Aレシオ」とは、企業を買収した場合に、買収に要した資金を何年で回収できるかを表した数字です。
M&Aレシオ(年) = 対象企業の買収に必要となる金額 / 対象企業のキャッシュフロー
「M&Aレシオ」の数値が小さいほど割安であることを意味し、買収先として魅力が高いことを示します。
「M&Aフォーカス・ファンド」は「M&Aレシオ」だけでなく、その他の財務的な指標も分析し評価されています。また、財務諸表に現れないような定性的な評価(株主重視度評価)も行い、M&A魅力度が高い投資先を探します。これらの情報に基づき、最終的に専門家であるファンドマネージャーが投資先を決定していく仕組みの投資信託となっています。
別の例を見てみると、東京海上アセットマネジメントが運用する「東京海上・グローバルM&Aフォーカスファンド」は、投資先は日本国内にとどまらす、国内外で公表されたM&A案件の買収対象企業(買収される側の企業)の株式に投資していくという運用戦略です。M&Aが公表されてから、実際にM&Aが完了するまでの間に、買収される価格より低く株式を購入して、そこに収益を求めるものです。
このように、同じテーマ型投資信託でも、投資信託によって運用方針が違ってきます。どのような運用方針がとられるのかは、「投資信託説明書(交付目論見書)」を見ることで知ることができます。
M&Aのテーマ型投資信託を購入してみたいなら、自分の納得のいく方法で運用してくれるかをよく確認しましょう。そのためには、先ほど紹介した「投資信託説明書(交付目論見書)」をしっかり読み、その投資信託の運用方針を比較検討していくことが必要となるでしょう。
投資信託は証券会社や銀行といった金融機関で購入することができます。しかし、M&Aをテーマとする投資信託はそれほど多くの本数があるわけではなく、金融機関の投資信託ラインナップに含まれていないこともあります。場合によっては、目的の投資信託を探してから、その投資信託を扱っている金融機関を探す必要があります。
なお、M&Aのテーマ型投資信託の場合、専門家による高度な分析が必要となります。そのため、各種手数料が他の投資信託に比べて高く設定されている傾向があります。手数料に注意して投資信託や金融機関を選ぶ必要もあるでしょう。
参考資料:
・明治安田日本株バリューアップ・セレクト100(雷)目論見書(PDF)はこちら
・三井住友DSアセットマネジメント「M&Aフォーカスファンド」目論見書(PDF)はこちら
・東京海上グローバルM&Aフォーカスファンド 目論見書(PDF)はこちら
文:M&A online編集部
ご注意:当記事の個別の銘柄および企業については、あくまで説明のための例示であり、個別企業の推奨を目的とするものではありません。