新聞、テレビ、ネットでニュースを見ていると、「業務提携」、「資本提携」という言葉が目に飛び込んでくることがあります。
最近では、「大手自動車メーカーのトヨタと四輪車及び二輪車メーカーのスズキが業務提携に向けた検討を開始した」といった報道がありました。また、「大手IT企業の楽天と飲食店情報サイト運営企業のぐるなびが資本業務提携の契約を締結した」といった「資本業務提携」という言葉を見かけることもあります。
これらの言葉は似ていますが、違いがあります。本稿では、「業務提携と資本提携の違い」について解説します。
業務提携と資本提携の内容は、次のとおりです。
独立性を保つ複数の企業が協力して業務を行うこと。資本の移動を伴わない。生産工程の一部委託、技術の共同開発、営業・販売ルートの共用、人材の確保など、様々な分野での提携がある。アライアンス(Alliance)とも呼ばれる。
独立性を保つ複数の企業が資本参加を伴って協力関係を築くこと。資本の移動を伴う。増資の引き受けなどにより、お互いの株式を一定数取得する。広義のM&Aに含まれる。
業務提携による業務の協力関係に加えて、資本提携による株式の移転も行う。
業務提携と資本提携には、次のようなメリットとデメリットがあります。
メリット | デメリット |
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多額の資本を調達する必要がなく、互いの企業が保有する強みや経営資源(ヒト・カネ・モノ・ノウハウ)を活かして業務を行える。新事業や新商品開発などでシナジー効果を発揮しやすく、経営リスクの軽減も図れる。 | 資本提携と比べて、財務面、経営面までカバーできるシナジー効果を発揮しにくい。 |
株式の移転を伴わない緩やかな提携であるため、相手企業による経営の介入を回避できる。それにより機密情報を知られにくい。 | 資本提携と比べて協力関係が弱く、容易に提携を解消されるおそれがある。 |
メリット | デメリット |
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単なる業務提携よりも、財務面や経営面でもシナジー効果を発揮しやすく、経営リスクの軽減も図れる。 | 多額の資本を調達する必要がある。 |
複数の企業が互いの株式を取得することで、より強固な協力関係を築くことができる。 | 相手企業に議決権がある一定割合の株式を渡すことで、経営に介入されることになる。それにより機密情報を知られやすい。また、株式の移転を伴う強固な提携であるため、提携を解消する際の労力が多くかかる。 |
上の表を見てわかるように、業務提携と資本提携のメリットとデメリットは裏返し(トレード・オフ)の関係になっています。
業務提携や資本提携を行う際は、それぞれのメリットとデメリットを知ったうえで、自社の強みや経営資源を現状把握して企業成長に向けた経営課題を明確にし、相手企業とどのような関係性を築きたいのか、どのようなシナジー効果を発揮できるのかを見極めてから、実行することが重要です。
文:和田 純子(中小企業診断士)