M&Aの「基本合意書」サンプル書式と作成上の注意点

基本合意書(Letter of Intent、Memorandum of Understanding)」とは、買い手企業と売り手企業が互いに「M&Aを進めること」について合意したら、締結する契約書です。基本合意書のことを、略称の「LOI」や「MOU」と呼ぶ人もいます。

M&Aの基本契約には法的効果がない部分が多数ですが、デューデリジェンスの実施や独占交渉、秘密保持義務については法的義務を認めます。

基本合意書とはどのような契約書で、どのようなことを書けば良いのか、サンプルとともに解説します。

1.M&A基本合意書のひな形(サンプル書式)

まずは基本合意書のひな形を示します。

株 式 譲 渡 基 本 合 意 書

株式会社〇〇〇〇(以下「甲」という)と〇〇〇〇(以下「乙」という)は、相互の発展を目指し、乙が有する対象企業〇〇〇〇株式会社 (以下「丙」という)のすべての発行済株式を甲が乙から買取る株式譲渡契約(以下「本件取引」という。)につき、最終契約の締結を目指して、以下の通り合意した。

 

第1条(取引の内容)
1.乙は乙が丙の発行済み株式3000株(以下「本件株式」という)をすべて単独所有していることおよびこれらが全部普通株式であることを表明・保証する。
2.甲は、本件株式を乙より金2億円にて買い取る意向を表明し、乙はそれを了承する(以下「本件株式譲渡」という)。
3.乙が丙のために負担する金融機関への保証債務については、最終契約後速やかに丙が代替保証、担保代位弁済等の方法によって消滅させる。
4. 丙は最終契約までに本件株式譲渡について取締役会の承諾を得る。

第2条 (丙の役員と従業員の取扱い)
1.乙は、最終契約締結と同時に丙の代表取締役及び取締役を退任し、丙は乙に対して退職慰労金6000円を支払うものとし、甲はこれに同意する。
2.丙の他の取締役〇〇〇〇と△△△△は最終契約締結と同時に退任し、乙は丙の退職金規定にしたがい、それぞれ〇〇円の退職金を支払うものとし、甲はこれに同意する。
3.乙は最終契約までに、〇〇〇〇と△△△△から退任の了承を得る。
4.甲は、乙の退任後1か月間、乙を丙の顧問として金〇円の顧問料を支払う。
5.乙が丙の顧問をつとめる期間は最低5年とする。
6.甲は最終契約締結後も、本契約締結時における丙の従業員を従来と同等の条件で雇用継続する。

第3条(表明及び保証)
1.乙および丙は丙の株式について、第三者がストックオプション新株予約権などいかなる方法によっても権利を有しないことを甲に対して表明、保証する。
2.乙および丙は、甲に提出済みの丙財務諸表の内容が真実かつ適正であると保証し、貸借対照表に計上されていない簿外債務が存在しないことを甲に対して表明、保証する。
3.乙および丙は、2019年〇月末日以降、丙の財務や資産状況、経営成績等に重大な悪影響を及ぼす可能性のある事由が発生していないことを甲に対して表明、保証する。
4.乙および丙は、丙において従業員に未払いの賃料や時間外手当、社会保険料などの労働契約に関する債務が存在しないことを、甲に表明、保証する。
5.乙および丙は、丙が所有する土地や建物に関し有害物質による汚染がないことを、甲に表明、保証する。
6.乙および丙は、丙が第三者の特許権、実用新案権、商標権、意匠権、著作権等知的財産権を侵害していないと甲に表明、保証する。
7.乙および丙は、丙が第三者から訴訟をはじめとするクレームを受けておらず、予想しうる紛争も存在せず、丙には予想される重大な債務が存在しないことを、甲に表明、保証する。

第4条(デューデリジェンス
甲は、本件取引を遂行すべきか判断するため、本合意書の締結後2か月以内に甲及び甲が選任する弁護士、公認会計士その他のアドバイザー等が丙について以下の事項を調査し(以下「本件調査」とする)乙は本件調査の実施のため必要な協力をする。
 ① 会計処理、財務内容、将来の収益見通しなど
 ② 経営管理、営業活動、技術開発力、設備の保全・稼働状況など
 ③ 第三者との重要な契約関係、株式の帰属、不動産の利用・権利状況、労務関係、知財・著作権関係、係争事件の有無、汚染等の環境リスクなど 

第5条(善管注意義務
丙は最終契約締結日までの間、以下の行為を行わず、財産状態や損益状況を大幅に変化させないものとする。ただし、甲と乙が書面で合意する場合はのぞく。
 ① 増減資、新株予約権の発行
 ② 新規借入、新規投融資、担保権の設定
 ③ 重要財産の売却または購入
 ④ 従業員の賃金・給与の水準の大幅な変更
 ⑤ 重要な顧客との取引条件の変更

第6条(誠実交渉義務と独占的交渉権)
1. 甲及び乙は、2019年〇月〇日(以下「本件期日」という)までに本件取引に関し、最終契約を締結するため互いに誠実に努力をする。
2. 乙は本日から最終契約締結までの間、第三者との間で乙の有する丙の発行済株式の売却や丙による増資の引受け、丙と第三者との合併等、丙の経営権に変更を及ぼす一切の取引を行わず、丙にも行わせない。

第7条(代金額の修正、契約解除)
1. 甲による本件調査により、第3条の表明保証責任に違反が見つかった場合や丙の事業内容及び財務内容等について、甲の知らない重大なる瑕疵が発見された場合には、本件取引の代金額を瑕疵の程度に応じて修正する。
2. 前項の瑕疵が重大で回復困難であり、甲乙間の信頼関係を維持できない場合には、甲は本合意を解除できる。その際、乙に故意または重過失があれば乙は甲に対して損害賠償責任を負う。賠償金額の上限は第1条2項の代金額の20%とする。
3. 甲および乙は、相手方が仮差押、仮処分、強制執行、担保権実行、破産、民事再生、会社更生等の申し立てを受けた時、または、清算に入った場合、本合意書を解除できる。

第8条(契約期間)
第6条1項に定めた期日までに最終契約が締結できない場合、本基本合意は失効する。ただし甲乙間で、別途の契約がなされた場合はそれに従う。

第9条(秘密保持義務)
1. 甲は〇〇年〇月〇日付で甲が乙に差し入れた秘密保持契約は、本合意書発効後も、有効となることを確認し、甲は秘密保持に努める。
2. 乙及び丙は、本合意の締結および合意内容、本件取引に関して取得した甲の情報を秘密情報とし、以下の各号に該当するものを除いて第三者に開示しない。
(1)開示された時点で、既に公知となっていたもの
(2)開示された後で、自らの責に帰するべき事由によらず公知となっていたもの
(3)開示された時点で、既に自ら適法に保有していたもの
(4)正当な権限を有する第三者から開示されたもの

第10条(本契約の効果)
甲および乙は、本契約締結に向けて誠実に努力するが、最終契約締結を強制されるものではないことを確認する。

第11条(協議事項)
本合意書に記載の無い事項または本基本契約の内容に疑義が生じた場合の取扱いについては、甲および乙は、誠実に協議し、その解決を図る。

第12条(適用法と裁判管轄)
本合意書に関する解釈および紛争に対しては日本法を適用とし、東京地方裁判所を管轄裁判所とする。

以上、本契約の成立を証するため本書面3通を作成し、甲、乙及び丙が記名捺印し、各1通を保管する。

2019年〇月〇日

甲:

乙:

丙:

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