新規事業を収益化するには?「リブ・コンサルティング」関厳社長に聞く

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リブ・コンサルティングの関社長

業容の拡大や新分野の開拓などを目的に、新規事業の立ち上げに取り組む企業は少なくない。ただ、なかなか事業を収益化できていないのも事実。こうした状況を踏まえ、中堅やベンチャー企業を中心にコンサルティング業務を手がけるリブ・コンサルティング(東京都千代田区)は、新規事業の収益化を手助けする事業に乗り出した。

顧客企業とともに問題解決に取り組む「伴走型支援」の実績を武器に、まさに同社にとっての新規事業を展開するわけだ。そこで2012年に32歳で同社を立ち上げた関厳社長(42歳)に、事業立ち上げの背景や、新規事業を収益化できない理由、その対策などについてお聞きした。

事業開発にはスピードと混乱が必要

-新規事業を収益化するためのお手伝いを事業化すると決断されたのには、どのようなお考えがあったのでしょうか。

日本の産業はほとんどが成熟期に入っていて、横ばい状態にある。世の中の移り変わりは早く、こうした企業では成長産業に乗ろうというのが戦略の大前提となる。成長産業としてはITやデジタルなどの領域があり、この波にどう乗るのかということを真剣に考え出したのが、ここ10年ほどだろう。

この最大の理由はGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック=2021年社名をメタに変更、アマゾンの頭文字)がIT、デジタルで大きく成長したことにあり、同じようにこの分野で成長できるのではないかとの思いがあるようだ。

日本企業の強みは品質や計画力、改善などであり、これは、すでにあるものを磨き上げていくことを指しており、新しいモノを生みだすことを日本企業は苦手にしている。この部分を外部からどのように補うかが問われている。

当社の強みは、当社自体がゼロからスタートした企業であり、自分たちで中堅、ベンチャー向けのコンサルマーケットを作ってきた実績がある。ここ数年間では、その経験を大企業に活かすことも増えてきた。事業を作り出すのがうまい、これらの企業にコンサルティングを行っているため、この領域の知見は当社が強いと言える。これを、いろんなお客さんに還元していくということを考え、この事業に取り組むことにした。

-新規事業を収益化できない原因はどこにあるのでしょうか。

日本の企業はニーズがどこにあるのかをスピーディに探しに行こうとしない傾向がある。日本には計画を緻密に立てる習慣があるため、リサーチをして可能性がありそうなものに取り組んでいることが大半で、スピード感に欠けてしまう傾向が強い。事業を立ち上げるのはスピードと、混乱の中で探り当てていくというやり方が必要で、「石橋を叩いて渡る」ようなやり方では事業開発は難しい。

事業を作る時に社内を見るのか、社外の顧客を見るのかは大きな違いだ。大企業では社内で企画が承認されるかどうかは大きな問題になる。最終的にビジネスは売れなければだめで、社内を考えるのは後でいいのだが、ここのマインドチェンジが起きづらい。ここを修正するのがコンサルティング会社の役割であると考えており、我々が事業開発領域のコンサルティングをするケースでは「未開の地を切り開くためには外を見る必要がある。獲物と敵を意識したビジネス展開が成功のカギ」と伝えている。

組織的なルールを減らして勝負

-どのような対策が考えられますか。

大きな組織には多くの条件がある。大企業向けの事業開発のコンサルティングにおいて重要視していることは「大企業ならではの力学理解」に共感しつつも、その中でいかに成果を上げるためのレールを敷いてあげるかということ。新規事業をやろうとすると、「既存の事業とぶつかる」「顧客は紹介しません」など制約条件が多く発生する。ルールの中で戦うことは前提にありつつも、やってはいけないことや組織的なルールを減らして勝負させてあげないと成功は難しいだろう。

新規事業は立ち上げることさえ難しく、ある程度売り上げが立つようになるのはさらに難しく、継続するのに意味があるほどの売り上げと利益を確保するのはもっと難しい。宝くじの1等を当てるのが難しいのは分かっているので、外れても宝くじを当てるのは難しいとは言わないが、新規事業についてはあまり知らないので、収益を上げるのは難しいという。

まずは新規事業を収益化するのは、そんなに簡単なものではないと考えておかなければならない。ただでさえ、ゼロからイチを作るのが難しいのに、そこに社内の承認だとか、いろんなハードルを課したら、ただでさえ当たらないものがもっと当たらなくなる。

-ベンチャーやスタートアップも状況は同じでしょうか。

ベンチャー企業は、確かに創業者は新規事業を立ち上げた実績があるが、創業者以外の人たちは、新規事業を立ち上げるのが得意な人ばかりが集まっているのかというとそうでもない。若いからとか、ベンチャーにいるからということだけで、事業を開発する力があるということではないだろう。そこは大企業との差はあまりないと考えている。

-今後に事業展開についてお教え下さい。

現在、タイに拠点を構えており、ここで20人くらいが働いている。大変うまく回っており、全体の売り上げの10%ほどを上げており、利益ではもっと貢献している。タイから東南アジアのいくつかの国に出張するなどして、アジアでの事業を広げていく計画だ。将来は国内と海外の売り上げは半々くらいにしたと考えている。

【略歴】関厳(せき・いわお)氏
2002年に東京大学教育学部卒業後、大手経営コンサルティング会社に入社。
2012年にリブ・コンサルティングを設立。リブ・コンサルティングの代表のほかImpact Venture Capitalの代表パートナーも務める。
国内唯一のコンサルタント認定資格J-CMC(国際基準)を持つ。

聞き手・文:M&A Online編集部 松本 亮一