ウエディングドレス事業と結婚式場運営を行うクラウディアホールディングス<3607>が、明治4年創業の老舗写真館の内田写真を買収しました。買収金額は5億7400万円。貸衣装のクラウディアは、ウエディングドレスの提携先を広げることができず、自社で始めた結婚式場の運営と海外ウエディングも奮わない。帝国ホテルをはじめ、超一流結婚式場と提携している内田写真の太いパイプはクラウディアを起死回生へと導くのでしょうか?
この記事では以下の情報を得ることができます。
クラウディアは、2011年3月に「アイネスヴィラノッツェ沖縄」と2012年3月に「ル・センティフォーリア天保山」をオープンしました。その2施設が売上に寄与した2012年8月期が最盛期。売上高は147億400万円、売上総利益が97億円でした。そこまでは、6期連続の増収増益となっています。
その後失速し、2018年8月期の売上高は122億5100万円、売上総利益は86億9500万円でした。今期は減収、利益は微増の見込みです。
同社の事業は大きく4つに分かれます。
実はどの事業も不調が続いています。一つひとつ中身をみていきましょう。
【リゾート地の結婚式場運営】
主力となっていた、ハワイの「アネラ・ガーデン・チャペル」の集客が上手くいかず、取扱件数が減少しました。ドル箱となっている沖縄の「アイネスヴィラノッツェ」が件数を増やし、全体の底上げをしている状態です。しかし、ハワイの急減を食い止めるには至っていません。沖縄に新設した「グラン・ブルーチャペル カヌチャベイ」が、どこまで件数に寄与できるかが勝負となります。
グアム・サイパンのミクロネシア地域からの撤退が決まり、下のグラフの赤色の部分が、今後すっぽりと抜けてしまいます。件数の激減は避けられません。
【都市部の結婚式場運営】
2015年に出店した「ル・センティフォーリア大阪」により2016年の施行数は伸びましたが、そこから2年で150件以上落としました。新規出店の予定はなく、横這いが続くと考えられます。
【ドレス販売・衣裳店向けドレスリース(レンタル)】
ドレスの販売、貸衣装店のドレスリースも、伸び悩んでいます。中国などからの安価なドレスが広まったことと、神田うのなどの有名人を起用したブランドの人気が一巡したことが背景にありそうです。
※グラフの左は事業全体の売上高、右は受注計画です。
【貸衣装】
もともと主力だった事業です。ホテルや結婚式場などにテナントとして入り、ウエディングドレス、和装などのレンタルを行う事業です。売上、件数ともに落ち込んでいます。クラウディアは提携先を拡大できていません。
かつて、結婚式場の運営会社とドレスショップは、役割がきっちりと分かれていました。運営会社は集客して施行組数を増やすことに注力し、ドレスショップは花嫁の夢をかなえて顧客満足度の向上に専念すればよかったのです。
しかし、固定費が高くハイリスク・ハイリターンな運営会社にとって、利益率の高いドレスレンタルは魅力的でした。そこで、各社が自社のドレス部門を持つようになったのです。反対に、ドレスショップも結婚式場運営へと乗り出しました。かつて協業していた運営会社とドレスショップが競合するようになったのです。
クラウディアも結婚式場を運営するようになりましたが、前述のように不発に終わっています。結婚式場運営は春・秋の超繁忙期に稼げるだけ稼ぐモデル。限界利益率は高いものの、損益分岐点も高い。ちょっとしたことで施行組数が落ちると、赤字になる可能性があります。
そんなリスクを抱えるくらいなら、やはりテナントとして入っていた方が得策に思える。つまり、提携会場を増やしてドレスの稼働を高めれば良いわけです。しかし、そう簡単に提携会場を増やすことはできません。
下の表は、クラウディアの差入れ保証金の推移です。ドレスショップはテナントとして入る際、保証金を差し入れるのが普通。その増減で提携会場が増えているか、減っているかがわかります。
決算期 | 2014年8月期 | 2015年8月期 | 2016年8月期 | 2017年8月期 | 2018年8月期 |
店舗保証金 | 11億6100万円 (1.3%減) |
11億5700万円 (0.3%減) |
12億400万円 (4.1%増) |
11億300万円 (8.4%減) |
10億4700万円 (5.1%減) |
※有価証券報告書より筆者作成
保証金は2016年8月に増加したのち、減少が続いています。思うように、提携会場を増やすことができていません。テイクアンドギヴ・ニーズ<4331>やエスクリ<2196>などのウエディング企業がドレス事業を持つようになり、新規出店会場にはテナントとして入りづらくなりました。そして、既存のホテルや会場などにはすでに業者が入っており、提携の余地がないものと考えられます。
こうした背景を踏まえ、内田写真買収に動いた可能性が高い。老舗の内田写真は、帝国ホテルなどの超一流会場に食い込んでおり、太いパイプでつながっているからです。同社の業績は決して良いものではありません。取引基盤の拡大が買収の主目的だと考えられます。
【内田写真過去3年間の業績】
決算期 | 2015年12月期 | 2016年12月期 | 2017年12月期 |
売上高 | 24億6100万円 | 22億2900万円 | 20億8900万円 |
営業利益 | △1億100万円 | △1億1200万円 | △6400万円 |
※クラウディアの買収発表より筆者作成
内田写真の本社は、大阪天満宮の横にあります。土地の所有者は代表の内田昌彦氏の個人所有。クラウディアはその土地の購入も検討中です。衣裳店と宴会場の新設など、神社婚との相乗効果が狙えます。
提携会場の拡大と不動産の開発。内田写真の買収は、クラウディア起死回生のチャンスとなるでしょうか。
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