赤字転落のラーメンチェーン「幸楽苑」が上げる反撃の狼煙とは

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東京・日本橋の店舗

ラーメンチェーン店を展開する幸楽苑ホールディングス(HD)<7554>が、2020年3月期に最終赤字に陥る。2019年3月期に黒字転換してわずか1年で再び赤字に沈む。 

だが2026年3月期に売上高1000億円、経常利益100億円を目指す中期経営計画(2020年3月期-2026年3月期)の目標は変更しないという。中期経営計画の初年度(2020年3月期)から出鼻をくじかれた形の同社だが、一体どのような戦略を持つのだろうか。

台風に加え新型コロナウイルスの影響も

幸楽苑HDは2020年3月9日に2020年3月期の業績を下方修正し、売上高をそれまでの420億円から380億円に引き下げた。営業利益は21億円から6億円に、経常利益は20億円から8億円に、当期損益は11億円の黒字から4億円の赤字にそれぞれ修正した。 

業績は2020年3月期第2四半期(2019年4月-9月)までは、ほぼ予想通りに推移していた。しかし2019年10月に上陸した台風19号による水害で、工場の操業停止や店舗の臨時休業などに追い込まれたうえ、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い2020年2月中旬ごろから客数が減少、3月は一段と影響が広がる見込みのため、大幅な減収減益を余儀なくされた。 

こうした状況を踏まえ同社では2019年12月から低収益店の閉店や業態転換を進めており、その数は2019年9月時点の店舗数の1割ほどに当たる51店に達する。 

この取り組みで収益率の向上や物流網見直しによるトータルコストの圧縮などを進め、収益重視型経営に大きく舵を切るという。

 【幸楽苑HDの業績推移】単位:億円、2020年3月期は見込み

  2016年3月期 2017年3月期 2018年3月期 2019年3月期 2020年3月期
売上高 382.06 378.03 385.76 412.68 380
営業損益 8.74 1.47 △0.72 16.36 6
経常損益 8.58 3.3 △1.14 15.87 8
当期損益 1.33 1.54 △32.25 10.09 △4

M&Aで新たな成長ステージに 

だが、これだけでは現在の2倍以上となる1000億円の売り上げを達成することは難しい。そこで同社が打ち出しているのがM&Aだ。2019年5月に発表した中期経営計画では「M&Aを中心とした新たな飲食チェーンのグループ化」を重点施策の一つとして掲げた。 

51店舗の閉店や業態転換を発表した2020年1月の資料でも「M&Aを活用しながら規模拡大を図っていく方針に変わりはない」とし、M&Aに前向きな姿勢を改めて強調した。 

同社はこれまであまりM&Aを実施してこなかった。直近では2018年に子会社のデン・ホケン(福島県郡山市)の保険代理店事業を、ヒューリック保険サービス(東京都台東区)に譲渡したくらいで、企業買収による業容の拡大といった選択肢はこれまではなかった。 

1000億円企業を目指すには既存事業の成長に加え、M&Aが欠かせないと判断したわけで、同社の主力であるラーメン以外に、和食や洋食などの他業態の企業を傘下に取り込むものと思われる。どのような飲食チェーンを買収するのか。幸楽苑HDが今、M&Aで新たな成長ステージに移ろうとしている。

幸楽苑HDの沿革
1954 創業者の新井田司氏が福島県会津若松市に、味よし食堂を開店
1967 味よし食堂を幸楽苑に改称
2002 子会社デン・ホケンを設立
2002 東京証券取引所市場第二部に上場
2003 子会社スクリーンを設立
2003 東京証券取引所市場第一部に上場
2015 幸楽苑ホールディングスに社名変更
2018 デン・ホケンの事業を譲渡
2018 子会社のスクリーンとデン・ホケンを吸収合併
2018 京都工場を譲渡

文:M&A Online編集部