「幸楽苑」「一刻魁堂」の上場ラーメン2社が中期計画、局面転換なるか?

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東京都内の店舗

ラーメン「幸楽苑」の幸楽苑ホールディングス、「一刻魁堂」を展開するJBイレブンの上場ラーメン企業が中期経営計画を策定した。新型コロナウイルス感染拡大が続く中、外食事業をめぐる顧客の生活様式の変化をとらえ、どうピンチをチャンスに変えていくのか。

幸楽苑、「中食」で5年後100億円

幸楽苑HD、JBイレブンは2021年4~6月期(第1四半期)業績の発表に合わせ、中期経営計画を公表した。JBイレブンは当初5月を予定していたが、コロナ禍による業績への影響が不透明なことなどから公表を延期していた。

「Kourakuen Next 500」と名付けた幸楽苑HDの新中計は期間5年で、最終年度の2026年3月期に売上高500億円、500店舗を目標に掲げた。売上高は初年度(22年3月期)見通しの288億円の1.7倍にあたり、店舗数は現在の約440店舗から1割強増やす。営業利益は50億円(22年3月期見通しは3億円)を目指す。

その実現に向け、打ち出したのが総合食品企業への脱皮だ。ラーメン事業を主体とするイートイン型の外食企業の枠にとどまらず、食材の外販・通販やデリバリーなどの非外食領域、つまり「中食」領域に打って出る方針だ。

計画によると、売上高500億円の内訳は外食事業で400億円、非外食事業で100億円。外食事業では「幸楽苑」店舗400店、新業態100店の計500店体制を整える。非外食事業ではラーメン・ギョーザなど食材の外販で40億円、通販で20億円、デリバリーで15億円、からあげ関連25億円を想定している。

「幸楽苑」の店舗数は現在とほぼ同じ水準をキープする。一方、新業態の100店について具体的な中身は明らかではないが、これまでの取り組みを踏まえれば、焼肉店やからあげ店が中心になると見られる。これら外食事業では海外展開にもアクセルを踏み込む構えだ。

コロナ禍による業績悪化の深刻化を受け、今年5月に50人規模の希望退職を実施しており、新中計を反転攻勢の踏み台としたい考えだ。

◎幸楽苑HD:中期計画の目標(売上高などの単位は億円、2021年3月期は実績)

2021/3期 22/3期 24/3期 26/3期
売上高 265 288 400 500
営業利益 △17.3 3 40 50
最終利益 △8.4 2.5 28 35
自己資本比率 18.4% 37% 42% 50%
店舗数 437 435 460 500

創業50周年のJBイレブン、M&Aも視野に

ラーメン「一刻魁堂」、中華「ロンフーダイニング」を手がけるJBイレブンは2024年3月期まで3カ年の新中計をまとめた。1971年に前身の「サッポロラーメン11番」が創業して50周年の節目。新中計をやり遂げれば、売上高100億円の大台が見えている。現在、地盤である愛知県をはじめ、岐阜、三重、静岡、埼玉、神奈川、広島の各県で91店(うち直営87店)を展開する。

フランチャイズ(FC、現在4店)事業や、新事業として注力中の生ギョーザの小売り事業(無人販売を含む)を拡大するほか、M&Aを視野に入れて新業態や周辺領域を模索する。M&Aについては喫茶店・レストラン、中華料理店などの買収を手がけた実績がある。

◎JBイレブン:中期計画(単位億円、2021年3月期は実績)

2021/3期 22/3期 23/3期 24/3期
売上高 59.7 66 82.6 94.9
経常利益 △0.84 △0.47 1.84 3.37
最終利益 △3.86 1.32 1.05 2.31

文:M&A Online編集部